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342 飛ヶ崎=宮城郡七ヶ浜町松ヶ浜(宮城県)湊浜と松ヶ浜から岬も結界をつくっているか [岬めぐり]

 七ヶ浜町は、貞山堀で塩竈市と接し、その南では細い道と曲りくねった境界で多賀城市と西の境を分け、その南端は新仙台火力発電所とそれに隣接する新日本石油の仙台製油所の敷地で仙台市と接している。ぽこっと東に出っ張って、松島湾を囲み込むのに協力しているのが宮城郡七ヶ浜町である。
 新仙台火力の広大な敷地の東側は公園になっており、あたかもそれが俗世と特殊な区域を区切る結界のような役目をしている。公園があるところが七ヶ浜町湊浜で、飛ヶ崎トンネルを越えると七ヶ浜町も松ヶ浜となる。飛ヶ崎もまた小さな世界を分ける結界であったかのように、岩山が途切れながらも懸命に海に延び出している。
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 ちょうど訪れたのは朝も早い時間で、南向きの海岸は東を望めば逆光になる。トンネルを抜けて岬を東西から見る景色が、まるで違って見える。これもまたちょうど結界を越えたような雰囲気がある。ほら、トンネルの丸と上の空も…。
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 飛ヶ崎というのはトンネルのある小山が海岸を仕切っているところだが、その延長線上に、船のようにも見える細長い岩島があるので、これと一体となって岬を形成しているともいえる。この兜島という島も、ちゃっかりと港の護岸工事に活用されているのである。
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 昨夜も塩釜の駅に近いホテルに泊まってたので、この日は朝食も早々に本塩釜から通勤客も多い上りの仙石線で下馬という二つ先の駅まで行く。七ヶ浜町は鉄道の駅をもたない。降りた下馬駅は、多賀城市だ。そこからは七ヶ浜循環バスがあるというので、それに乗るつもりだった。循環バスだから、先に北側を回るのと南から回るのと二系統あるが、いずれも下馬が起点らしい。そこまでは調べて時刻表も確認して来たのだが、なんと、下馬の駅は想像を超えていた。
 無人駅のうえに、出口は東側だけで、いわゆる“駅前”がほとんどない。ただ、細い道が90度に折れ曲っているだけで、およそバスが通るようなところではない。
 その駅で電車を降りると、すぐ聞こえてきたのは、ある革新政党(この言葉ももはや死語か)の宣伝隊の拡声器から流れてくる声だった。
 「…自民公明の政権は、お金がなくてこのままでは国がやっていけないからといって税金を上げようとしています。取れるところから取れるだけ取ろうというので、定率減税も老年者控除も廃止してきました。そうしておいて、今度は選挙対策で金をばらまいて票を買おうとしているのです。でそのうえ後期高齢者だの…(よく聞いていなかったので中略)…そのくせ、自分たちがかかわっている大きなムダには、小手先のごまかしでいっさい抜本的な手を付けようとはしていません。みなさん。税金を上げる前にやることはいくらでもあるのです…」
 この政党のいうことには、なるほどということも多い。こういう議席を多く持たない政党の果たす役割もそれなりにあるのだと、そう思いたい。こんな街頭演説を立ちどまって聞いていた訳ではなく、ホームをゆっくりあるきトイレに寄って改札を出るまでの間に聞こえてきたことだ。それにしても早朝からみなさん熱心なことだ。確かに、今度の“給付金”は、経済対策と称しているがその実選挙運動であることはミエミエで、こんなことで政府与党に多少なりとも利があったということにでもなれば、それはまさしく絵に描いた「朝三暮四」で、選挙民はサル程度だという証明にもなる。四字熟語の例題解説にでも使えそうだ。
 駅前の道には幟を立てビラを配っている人が数人…。しかし、いったいバスはどこから出るのだろう。
 思い余って、ビラ配りの一人に尋ねてみた。すると、その人は(動員されて他所から来た人なのか)知らないらしく「Sさん…バス停は…」と別の人を呼んでくれた。そのSさんが言うには、ここにはバスは来ないのだという。教えられた道順は右に左に折れ曲って、さっぱり呑み込めないがとにかく大通りに出ればいいという。それだけを頼りに走り出す。バスの出る時間までには、あまり余裕もない。おまけに、毎度のことながら、これを逃すと大変なことになる。途中で確かめながら、なんとか大通りまで出て、バス停まで辿り着いた。
 七ヶ浜の岬は、北側にはまったくなくて、南側に集っているが、循環バスだから、どちらから回ってもいい。北を回って多聞山へ寄ってもいいなあと考えていたので、先に来るはずの北回りを待っていたのだが、どうもそれにしてはバス乗場の位置がおかしいように思え、おまけに表示されている時刻を過ぎてもバスは現われず、不安だったがとにかく待つしかない。
 …とそこへ、白い軽自動車が寄ってきてピッピッと軽く警笛を鳴らすではないか。見ると、先ほど駅前で道を教えてくれたSさんが運転している。意外だったので驚いているでんでんむしに、「いいからいいから。とにかく乗りなさい」と言う。
 その勢いにおされて助手席に乗ると、どこへ行きたいのか近くまで連れて行くという。「火力発電所の…」というと話が早かった。そのSさんもこれからそこへ出勤するするところだというのだ。それならと、お言葉に甘えて飛ヶ崎のトンネルまで連れて来てもらったのだった。
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 実は火力発電所はこのあたりに二か所ある。北回りのバスに乗れれば代ヶ崎浜の仙台火力のほうから回るつもりだったが、南の新仙台火力のほうからでかまわない。
 Sさんは、運転しながら、どこから来たのか、どこへ行くのか、から始まって、いろいろ話しかけてきて、自分も定年はとうに過ぎたのでもうじき辞めるつもりなのだという。再雇用か関連会社での仕事か、恐らくそんなところだろうが、昔は世界中を仕事で回っていたのだという。地名を聞いてもすぐにはピンとこないところが多かったので、いわゆる発展途上国が中心だったのだろう。日本の火力発電の技術も、Sさんのような人によって、世界で役立っているのだろう。
 またこの人も、自分の政治信念と仕事という違う世界の結界を、自分の中でうまく行ったり来たりしながら、これまでやってきたのだろう。それも見事な生き方というべきであろう。
 それにしても、岬めぐりで通りすがりの知らない人に車に乗せてもらったのは、これが初めてだった。おかげさまで、ずいぶん早く最初の岬までやってこれて助かった。親切に感謝してお礼を言うと、なんのなんのとSさんの白い軽自動車は、火力発電所のほうに戻っていった。

▼国土地理院 「地理院地図」
38度16分43.57秒 141度2分56.49秒
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dendenmushi.gif東北地方(2008/10/15 訪問)

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タグ:宮城県
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コメント 4

飛騨の忍者 ぼぼ影

なんか趣のある風景ですね。

by 飛騨の忍者 ぼぼ影 (2008-11-23 10:41) 

knaito57

トンネルと青い空の画像は秀逸、岩島のシルエットは軍艦に見えます。
Sさんとの交流エピソードはいいですね。旅番組の“出会い”というのはうさんくさくて閉口するけれど、こういう出会いはいい。やはり土地柄かなあ。
ご注進! 近年各地で路線バスの廃止が続発している、とNHKでやっていました。それでなくてもバスというのは(いつ来るか、来ないかも)と気をもむものですが、これまでなくなってしまったら、でんでんむしさんの岬めぐりはますます難渋しますなあ。
by knaito57 (2008-11-24 09:56) 

dendenmushi

@そうですねえ。飛騨の忍者 ほぼ影さんのいわれるとおり、景色にはそれぞれの趣というのがありますねえ。
 でんでんむしは、いわゆる観光名所よりも、こうしたところに趣をより強く感じるタチ…。
 まあ、そんなとこでしょうか。
by dendenmushi (2008-11-25 07:12) 

dendenmushi

@そう、でんでんむしも軍艦に見えた。それで、そういう名前が残っているのかと思えば、そうでもないんですね、これが。
 旅番組などでやたら使う「出会い」は、あくまでもタレントやテレビカメラやを意識したものだからで、そういうのは別のことですよねえ。だから、あんまり安易に使って欲しくないと、でんでんむしも思います。
 ただ、このSさんとでんでんむしのが「出会い」なのかというと、どうなんだろう? あんまり自信はありませんけどね。袖摺り合うも他生の縁…であることは、事実だなあ。
 バスは、岬めぐりで実感しているところで、どこへ行っても、その問題が大きくなっています。利用者が少なくなったというのが、その根底にあるとしてもねえ。これが地方の衰退の大原因だと思うのです。
 自動車会社の会長が、「(厚労省などの)悪口ばかりいうテレビにコマーシャルを出さないで報復する」といったというのは、トヨタの広報が走り回って、火消しをした結果だと、勘ぐっているのですが、テレビやマスコミが自主規制した面もあるのでしょう。あまり、大問題にはなりませんでした。
 しかし、こんなヤツが…と言う思いはますます強くなっていきますね。自動車会社にも報復する必要があるのでは…?


by dendenmushi (2008-11-25 07:27) 

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