324 観音崎=七尾市鵜浦町(石川県)こうして寝そべって空をみるのは何十年ぶりか小口瀬戸 [岬めぐり]
七尾市の最東端である観音崎は、七尾駅から北東方向に12キロも離れた場所にあたる。観音崎から北へ1.7キロ、観音堂の屋根の向うには能登島の松鼻という岬がある。この海峡が、小口瀬戸という七尾湾が外海につながる南側の出入り口、ということになる。

小さな鞍部でかろうじてつながっている、30メートルに満たない小山がある半島が、東の富山湾に向かって突き出しており、その手前の南北に、それぞれ集落が山寄りに固まっている。南と北、それぞれに漁港があり、北は七尾南湾の小口瀬戸に面し、南は富山湾のほぼ中央部に向いて開いている。



岬の先端には灯台があり、その足元の海岸にも数戸の民家が肩を寄せ合っていて、目と鼻の先には丸い小島が浮かんでいる。この島には、一家が住んで暮せるくらいのちゃんとした観音堂があって、観音島という名前がついている。

全国の岬の名前で、3番目に多いのがこの「観音崎」だということは、前にも広島のところでもふれたが、ここは正真正銘、観音さまが住まいする観音崎である。
南北に分かれた集落の名は、鹿渡島。それでは、ここも昔は島だったのかと思わせるが、南北を結ぶ鞍部は、砂洲がつながったというような頼りないものではなく、小さいながらしっかりした峠のようだ。これなら鹿でもなんでも渡るのに苦労はない。
灯台に登る道の途中に、なにやら立札が立っている。その脇からはほんのぽたぽたという程度の清水が染み出していて、なにやら音がしている。まこと立札の説明にあるように、水琴窟そのままのようだ。

人間は、このちっぽけな岬の先端に住み着いて暮すために、洞窟を掘ってそこに地下水を集めて水を確保しようとした、その名残りなのだという。
すごいなあ。海岸の脇の崖からは、一筋のささやかな滝が流れていた。これもそうなのだろう。
そこで顔を洗い、しばし昔の人に思いを馳せてみる。なにしろ、時間だけは充分過ぎるほどある。帰りの七尾行きのバスは、実に3時間以上も先にならないと、やってこないのだ。

ゆっくりと集落の間を歩き、途中なかなか根性のありそうな小猫をからかったり、小さな畑の囲いに役目をしている芙蓉の花に見とれたり、どんなにしてみても、ヒマである。
なにしろ、鹿渡島には、食堂はおろか自動販売機を探すのにも苦労をしなければならないほど、みごとになにもない。確かに、七尾市でもはずれには違いがないが、こんなになにもないところだとは想像もしていなかった。
それでも、そこに人は生活している。

バス停のある南側の港の突堤に寝そべって、釣り人が車でやってきては糸を垂れる様子を眺めたり、出漁の準備をしているらしい漁師さんの動きを追ってみたり、ぼんやりと空を見上げて流れる雲をみて、ひたすら無為の時を過ごす。

遠くに黒い雲の塊が流れていき、遠雷の音が響いてくる。この様子では、富山のほうはきっと雷雨だろう。

頭の真上の空は、秋の空…。ほんとうに何十年ぶりだろう。こうして、寝そべってひたすら空を眺めているのは…。
▼国土地理院 「地理院地図」
37度6分26.75秒 137度3分27.16秒

北越地方(2008/09/06 訪問)

小さな鞍部でかろうじてつながっている、30メートルに満たない小山がある半島が、東の富山湾に向かって突き出しており、その手前の南北に、それぞれ集落が山寄りに固まっている。南と北、それぞれに漁港があり、北は七尾南湾の小口瀬戸に面し、南は富山湾のほぼ中央部に向いて開いている。



岬の先端には灯台があり、その足元の海岸にも数戸の民家が肩を寄せ合っていて、目と鼻の先には丸い小島が浮かんでいる。この島には、一家が住んで暮せるくらいのちゃんとした観音堂があって、観音島という名前がついている。

全国の岬の名前で、3番目に多いのがこの「観音崎」だということは、前にも広島のところでもふれたが、ここは正真正銘、観音さまが住まいする観音崎である。
南北に分かれた集落の名は、鹿渡島。それでは、ここも昔は島だったのかと思わせるが、南北を結ぶ鞍部は、砂洲がつながったというような頼りないものではなく、小さいながらしっかりした峠のようだ。これなら鹿でもなんでも渡るのに苦労はない。
灯台に登る道の途中に、なにやら立札が立っている。その脇からはほんのぽたぽたという程度の清水が染み出していて、なにやら音がしている。まこと立札の説明にあるように、水琴窟そのままのようだ。

人間は、このちっぽけな岬の先端に住み着いて暮すために、洞窟を掘ってそこに地下水を集めて水を確保しようとした、その名残りなのだという。
すごいなあ。海岸の脇の崖からは、一筋のささやかな滝が流れていた。これもそうなのだろう。
そこで顔を洗い、しばし昔の人に思いを馳せてみる。なにしろ、時間だけは充分過ぎるほどある。帰りの七尾行きのバスは、実に3時間以上も先にならないと、やってこないのだ。

ゆっくりと集落の間を歩き、途中なかなか根性のありそうな小猫をからかったり、小さな畑の囲いに役目をしている芙蓉の花に見とれたり、どんなにしてみても、ヒマである。
なにしろ、鹿渡島には、食堂はおろか自動販売機を探すのにも苦労をしなければならないほど、みごとになにもない。確かに、七尾市でもはずれには違いがないが、こんなになにもないところだとは想像もしていなかった。
それでも、そこに人は生活している。

バス停のある南側の港の突堤に寝そべって、釣り人が車でやってきては糸を垂れる様子を眺めたり、出漁の準備をしているらしい漁師さんの動きを追ってみたり、ぼんやりと空を見上げて流れる雲をみて、ひたすら無為の時を過ごす。

遠くに黒い雲の塊が流れていき、遠雷の音が響いてくる。この様子では、富山のほうはきっと雷雨だろう。

頭の真上の空は、秋の空…。ほんとうに何十年ぶりだろう。こうして、寝そべってひたすら空を眺めているのは…。
▼国土地理院 「地理院地図」
37度6分26.75秒 137度3分27.16秒




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