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307 鳥ノ口岬=福山市鞆町後地(広島県)「仙酔島」っていうけれど仙人が酔うほどの景色はもうない [岬めぐり]

 鞆の浦に浮かぶ仙酔島はぐるっとひと回りしても5キロほどの小さな島だが、その外周は切り立った崖になっているところが多く、一周する道もない。いくらかの観光施設があるが、基本的には人が住んでいるというのでもないらしい。
 これも、戦前の国立公園切手のなかにあって、その20銭切手は、対岸の山から俯瞰した絵柄になっている。阿伏兎もそのシリーズだったが、実は瀬戸内海国立公園は、日本で最初の国立公園なのである。しかも、当時はそのなかでまた個別の指定地があったらしく、鞆の浦はその第一号の栄誉に浴している。それだけ、日本の歴史のなかで注目されてきた景色なのだ。
 この島は、火山噴火物が固まって落下してできた凝灰岩でできているため、サザエのように、格好悪いムササビのように、不整形なツノをいくつも残すことになった。そして、それらのひとつひとつに、ちゃんと名前がついている。仙酔島の周辺にはいくつかの小島があり、南には走り島が淡く浮かんでいる。
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 鳥ノ口岬、京ヶ岬、祇園岬、赤岬、という。
 対潮楼のほうから見ると、見えるのは鳥ノ口岬だけなので、以上総代として、これだけを取りあげておくことにした。しかし、出っ張りだからといってすべてなまえがついている訳ではないのに、こんな小さな島の小さな出っ張りに、これだけ堂々と、しかも、鼻でも崎でもなく岬とついているのは、かなりの不思議といってよい。やはり、この島は特別なのだろう。
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 最近は、だいぶ情報が多く出るようになったので、よく知られるようにもなったが、日本と朝鮮は永くお互いに使節を送りあって、最恵国待遇をしてきた。ここ鞆の浦と仙酔島が有名になったのも、その朝鮮通信使のおかげなのかも知れない。通信使の一行をもてなすための迎賓館であった対潮楼からの眺めに感激して、その一人が「日東第一形勝」といったというのである。
 つまりは、“うちとこより東側についていえば、ここはいちばん美しいところでんなあ”とでもいう意味で、いかにも朝鮮人らしい物言いではある。
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 けれども、正直なところ、現代人のもつ感覚と情報量は、そうおおげさに持ち上げられても、 “ほんまでっかいな。ここよりええとこぎょうさんおまっせ”とでもいいたくなるだろう。(追記:後で知ったことだが、ここに橋を架ける計画が進んでいるのだという。ほんとにこのロクでもない惑星のロクでもない生命体は、ロクでもないことばかり考えて実行するもんだ。)
 鞆の浦の町の細い路地を歩くのも二度目である。古い昔から、営々として築かれてきた歴史の厚さを感じさせるには充分である。
 前回通らなかった路地を歩いていると、あの「七卿落ち」の謂れのある場所があった。
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 『篤姫』でもこれから登場する(ドラマには直接は登場しないか?)事件の主人公達も、西海へ向かう途中、ここにひとときの休息をみつけたのだろう。

▼国土地理院 「地理院地図」
34度22分40.78秒 133度23分54.93秒
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dendenmushi.gif中国地方(2008/07/15 再訪)

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タグ:広島県
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コメント 2

knaito57

何を隠そう。拙者も切手少年だった時期があるので、おぼろげながら国立公園シリーズを憶えています。当時は「あれもこれも欲しいのにお金がない渇望状態」で、シートごと持っているおとなをうらやんだものです。いつのまにかその熱気がさめてしまった理由のひとつは今日に至る記念切手の乱発にあるやうに思います。
鞆の浦については“鯛の浜焼き”を連想するくらいですが、古来いかにも日本的風光明媚な土地柄であることはわかるし、遠い島影や岬の出っ張りがその主たる要素であろうとは想像できます。
by knaito57 (2008-09-03 09:15) 

dendenmushi

@岬というものが、景観を構成するうえで、非常に大きなウエイトをもっていることは、名前があろうがなかろうが関係なく、いえることだと思います。
 海岸線が長くて複雑なこの日本では、とくに。
 切手収集という趣味をつぶしてしまったのは、郵政省の役人の目先の儲け主義だったのかもしれませんね。今では、切手収集が趣味だという人やこどもは、あまりいないですよね。
 少なくともでんでんむしとknaito57さんは、まったく同じ経緯を辿っていたことが判明しましたが、そういう人は多いのでしょう。
by dendenmushi (2008-09-04 09:08) 

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