295 ヤクショウ鼻=廿日市市大野(広島県)“大野瀬戸かき街道”で岬と名乗るもおこがましいが… [岬めぐり]
ヤクショウ鼻のあるところは、廿日市市の大野である。“廿日市市”というややこしい名の市は、類似形が全国にいくつもあるはずだが、ここ広島では廿日市と五日市が並んでいて、東側の五日市のほうはこじんまりと広島市の一部になっている。これに対して、廿日市市の市域はどんどん広がって、いつか事故のニュースにもなった山口県との県境に聳える恐羅漢山の中腹までがそうなのだというから驚く。廿日市市内ではスキーもできるし海水浴もできる、というわけだ。
この日は、五日市の市立植物園の上のほうにあるでんでんむし家のお墓参りに行く予定で、その前に前回の宮島訪問の際に取りこぼしていた二つの岬を訪ねたのだ。
でんでんむしは両親がはやくからいなかったので、祖父母に育てられた。その祖母は、原爆の日にはたまたま外に出ていて助からなかったが、家の中にいた祖父は奇跡的に助かった。家の中にいた人で一命をとりとめた人は意外に多かったようだが、外にいた人は苦しんで死んだ。祖母が亡くなったのは7日後であった。


日曜日だったので、もう気の早い海水浴の人もやってきていた。岩の出っ張りの上に木が茂り、海岸の岩礁地帯をちょっと外れると砂浜が広がり、あるかないかのさざ波が寄せている。これは292の亀石鼻と同じで、こういう岬と呼ぶにはおおげさずぎるような、この風情こそが、瀬戸内の岬の特徴である。名前のついていないこうしたところは、それこそ無数にあったはずであろう。だから、ちょっと目立つところだけは、「鼻」と呼ぶ名前が多くなったのではないだろうか。

まだこれまで降りたことがなかった玖波駅で降りて、海岸の2号線を引き返す。玖波は大竹市になり、大竹市は広島県南西端の市で、隣は山口県になる。大竹市には岬がないので、ヤクショウ鼻は島嶼部を除いて広島県南西端の岬となる。


玖波の北の海岸では、おもしろいものを発見した。人の家をおもしろいといってはあいすまぬが、頼りない地面の上にアンバランスな構築物があることで、一種のユーモアさえ感じられる。この船溜まりへ流れる水路にかかる橋が「唐船浜橋」。やはり異国船が入ってきたときの強い印象が、こんな名を残したのだろうが、それにしてもこの小さな橋にこのでかい看板。やはりアンバランスだが、どういう意味があるのだろう。
“大野瀬戸かき街道”の看板も…。
ヤクショウ鼻も岩山で、だから岬として残ったわけだろうが、ここは2号線も山陽本線もトンネルで抜けていく。人間でいえば長い長い後期高齢者の時代に入っている中国山地は、高山もなくなだらかな比較的やさしい山容をしている、といわれるが、このあたりではやはり急に海に落ちていく山肌を、花崗岩の露頭が覆っている。
いうまでもなく、目の前にあるのは宮島。



そうそう、「テレビや雑誌で再三取りあげられて、有名な宮浜温泉のあの旅館があるところのすぐそばなんですよ」といったほうが、わかりやすい人も多かったかもしれない。
▼国土地理院 「地理院地図」
34度15分54.52秒 132度14分57.09秒

中国地方(2008/07/13 訪問)
この日は、五日市の市立植物園の上のほうにあるでんでんむし家のお墓参りに行く予定で、その前に前回の宮島訪問の際に取りこぼしていた二つの岬を訪ねたのだ。
でんでんむしは両親がはやくからいなかったので、祖父母に育てられた。その祖母は、原爆の日にはたまたま外に出ていて助からなかったが、家の中にいた祖父は奇跡的に助かった。家の中にいた人で一命をとりとめた人は意外に多かったようだが、外にいた人は苦しんで死んだ。祖母が亡くなったのは7日後であった。


日曜日だったので、もう気の早い海水浴の人もやってきていた。岩の出っ張りの上に木が茂り、海岸の岩礁地帯をちょっと外れると砂浜が広がり、あるかないかのさざ波が寄せている。これは292の亀石鼻と同じで、こういう岬と呼ぶにはおおげさずぎるような、この風情こそが、瀬戸内の岬の特徴である。名前のついていないこうしたところは、それこそ無数にあったはずであろう。だから、ちょっと目立つところだけは、「鼻」と呼ぶ名前が多くなったのではないだろうか。

まだこれまで降りたことがなかった玖波駅で降りて、海岸の2号線を引き返す。玖波は大竹市になり、大竹市は広島県南西端の市で、隣は山口県になる。大竹市には岬がないので、ヤクショウ鼻は島嶼部を除いて広島県南西端の岬となる。


玖波の北の海岸では、おもしろいものを発見した。人の家をおもしろいといってはあいすまぬが、頼りない地面の上にアンバランスな構築物があることで、一種のユーモアさえ感じられる。この船溜まりへ流れる水路にかかる橋が「唐船浜橋」。やはり異国船が入ってきたときの強い印象が、こんな名を残したのだろうが、それにしてもこの小さな橋にこのでかい看板。やはりアンバランスだが、どういう意味があるのだろう。
“大野瀬戸かき街道”の看板も…。
ヤクショウ鼻も岩山で、だから岬として残ったわけだろうが、ここは2号線も山陽本線もトンネルで抜けていく。人間でいえば長い長い後期高齢者の時代に入っている中国山地は、高山もなくなだらかな比較的やさしい山容をしている、といわれるが、このあたりではやはり急に海に落ちていく山肌を、花崗岩の露頭が覆っている。
いうまでもなく、目の前にあるのは宮島。



そうそう、「テレビや雑誌で再三取りあげられて、有名な宮浜温泉のあの旅館があるところのすぐそばなんですよ」といったほうが、わかりやすい人も多かったかもしれない。
▼国土地理院 「地理院地図」
34度15分54.52秒 132度14分57.09秒




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