293 観音崎=安芸郡坂町字水落山(広島県)さほど大昔のことでもないのにすっかり様変わりして [岬めぐり]
亀石鼻から31号線に沿って北上すると、すぐ観音崎である。水色の屋根のクリーンセンター(近頃ではごみ処理場のことをそう呼ぶことになっているらしい)を過ぎると、「観音崎公園」という立派な看板があるので、期待して丘を登る。サクラの木が多そうだが、いまはただ陰気な、いや緑陰も濃くて静かである。
ところが、上まで登ってみてもなにがあるわけでもない。なにもなくていいが、こんなロケーションで海のウも見えないというのは、そもそもこの公園は、どういう目的でなんのためにつくられているのだろう、と疑問に思うような公園だった。
岬の上に上れば岬は見えず、という例で、わずかに展望が開けた南側にはクリーンセンターの屋根が見えるだけである。

いささかがっかりして丘を下り、北の海岸に回ってみて驚いた。ここから、とにかく広い長い人工砂浜の海水浴場ができて北へ延々と続いている。そして、この公園ができたのも、この海水浴場工事のおまけ(付帯工事)と考えれば、なんとなく熱もなにもこもっていない理由がわかるような気がしたが、まあこれはう がちすぎというものであろう。

観音崎は、その海水浴場の南端を押さえているのだ。末尾の地理院の地図では、水尻の海岸は半分しか海水浴場ができていないが、ちゃんと全部できている。
道と線路の脇にいきなり続くこの海水浴場も、なんとも頼りないヤシのような木がぽつぽつ立っているだけで、せっかくつくるならもうちょっと考えようがあろうに…。


ここにも泳ぎにきたようなかすかな記憶がある。小屋浦の北には海水浴場というわけでもない普通の浜があって、“水尻のほうが水がきれい”とか言われていたのだ。中学生のときには、自転車でここまで泳ぎに来たこともあった。もちろん、国道2号線も31号線も、今のように交通量はなく、まだそれも可能なのんびりした時代だった。道を渡ると、呉線の水尻駅がある。こんな駅は昔はなかったような気がする。帰ってきて調べてみると、この駅の開業は新しく、1999年(平成11年)、“乗車人員92人/日(降車客含まず)”だという。
夏のシーズンの数字も併記してやらないと、かわいそうな92人である。

駅のホームから山のほうを見ると、今問題の「財政再建優先派」と対立している一方の「上げ潮派」の頭目の大きなポスターが、その92人に見せるためであろうか、駅を向いて2枚並んで貼ってあるのが、いきなり眼に飛び込んできた。相手のほうは入閣してしまったので、これでいよいよ自民党も大増税路線を向いたということか。
今思えばやはり原爆症の影響もあったのだろうが、昭和33年に亡くなったうちの祖父にはこの政治家のオヤジのほうから、年賀状が来ていた。もっとも、オヤジといっても政治家にはよくある方式の“義父”なので、本人は東京生まれで東京育ち。この広島にも安芸郡にもなんの縁もゆかりもないことは言うまでもない。政治家と地盤というのは妙なもので、そういうのにいそいそと一票を入れる選挙民というのも変なものだ。
山の上のほうを通っているのは、広島呉道路という有料道路である。この山と斜面は、国土地理院の地図にはないがMapionでは、細かく区切ってそれぞれに字名がついている。観音崎のあるところは水落山、ここは水尻、そのほか南谷、荒井川、魚見、手切川、嶽…といた具合で、どういうわけで人家もない山の中がこんなふうになっているのだろう。そう思ってみると、この北側、坂駅の南の山も、そうなのである。これは、坂の町の歴史に、なにか関係ありそうだ。因に、毛利元就の時代、ここは坂氏という豪族がいて、一族なのになにかと毛利と対立していた。
大昔のことなのに知っていることもあれば、さほど昔のことでもないのに知らないことも多い。63年前といえば、もはや遙か昔のことだと言えないわけではないが…。
先日はNHK-BSで、アメリカ人のつくった“ヒロシマ・ナガサキ”のドキュメンタリーをやっていて、よくある手で何度もそんな場面を見てきたが、そのなかでカメラは渋谷の女の子に向けて聞く。
「1945年の8月6日になにがあったか知っているか?」
こういうときには、一人くらいは知ってるというのを混ぜるのが普通だと思うけれど、そこでは5〜6人だったか全員知らなかった。実際、あたったなかで知っているという子を見つけることができなかったのだろう。
▼国土地理院 「地理院地図」
34度18分53.57秒 132度29分42.46秒

中国地方(2008/07/15 再訪)
ところが、上まで登ってみてもなにがあるわけでもない。なにもなくていいが、こんなロケーションで海のウも見えないというのは、そもそもこの公園は、どういう目的でなんのためにつくられているのだろう、と疑問に思うような公園だった。
岬の上に上れば岬は見えず、という例で、わずかに展望が開けた南側にはクリーンセンターの屋根が見えるだけである。

いささかがっかりして丘を下り、北の海岸に回ってみて驚いた。ここから、とにかく広い長い人工砂浜の海水浴場ができて北へ延々と続いている。そして、この公園ができたのも、この海水浴場工事のおまけ(付帯工事)と考えれば、なんとなく熱もなにもこもっていない理由がわかるような気がしたが、まあこれはう がちすぎというものであろう。

観音崎は、その海水浴場の南端を押さえているのだ。末尾の地理院の地図では、水尻の海岸は半分しか海水浴場ができていないが、ちゃんと全部できている。
道と線路の脇にいきなり続くこの海水浴場も、なんとも頼りないヤシのような木がぽつぽつ立っているだけで、せっかくつくるならもうちょっと考えようがあろうに…。


ここにも泳ぎにきたようなかすかな記憶がある。小屋浦の北には海水浴場というわけでもない普通の浜があって、“水尻のほうが水がきれい”とか言われていたのだ。中学生のときには、自転車でここまで泳ぎに来たこともあった。もちろん、国道2号線も31号線も、今のように交通量はなく、まだそれも可能なのんびりした時代だった。道を渡ると、呉線の水尻駅がある。こんな駅は昔はなかったような気がする。帰ってきて調べてみると、この駅の開業は新しく、1999年(平成11年)、“乗車人員92人/日(降車客含まず)”だという。
夏のシーズンの数字も併記してやらないと、かわいそうな92人である。

駅のホームから山のほうを見ると、今問題の「財政再建優先派」と対立している一方の「上げ潮派」の頭目の大きなポスターが、その92人に見せるためであろうか、駅を向いて2枚並んで貼ってあるのが、いきなり眼に飛び込んできた。相手のほうは入閣してしまったので、これでいよいよ自民党も大増税路線を向いたということか。
今思えばやはり原爆症の影響もあったのだろうが、昭和33年に亡くなったうちの祖父にはこの政治家のオヤジのほうから、年賀状が来ていた。もっとも、オヤジといっても政治家にはよくある方式の“義父”なので、本人は東京生まれで東京育ち。この広島にも安芸郡にもなんの縁もゆかりもないことは言うまでもない。政治家と地盤というのは妙なもので、そういうのにいそいそと一票を入れる選挙民というのも変なものだ。
山の上のほうを通っているのは、広島呉道路という有料道路である。この山と斜面は、国土地理院の地図にはないがMapionでは、細かく区切ってそれぞれに字名がついている。観音崎のあるところは水落山、ここは水尻、そのほか南谷、荒井川、魚見、手切川、嶽…といた具合で、どういうわけで人家もない山の中がこんなふうになっているのだろう。そう思ってみると、この北側、坂駅の南の山も、そうなのである。これは、坂の町の歴史に、なにか関係ありそうだ。因に、毛利元就の時代、ここは坂氏という豪族がいて、一族なのになにかと毛利と対立していた。
大昔のことなのに知っていることもあれば、さほど昔のことでもないのに知らないことも多い。63年前といえば、もはや遙か昔のことだと言えないわけではないが…。
先日はNHK-BSで、アメリカ人のつくった“ヒロシマ・ナガサキ”のドキュメンタリーをやっていて、よくある手で何度もそんな場面を見てきたが、そのなかでカメラは渋谷の女の子に向けて聞く。
「1945年の8月6日になにがあったか知っているか?」
こういうときには、一人くらいは知ってるというのを混ぜるのが普通だと思うけれど、そこでは5〜6人だったか全員知らなかった。実際、あたったなかで知っているという子を見つけることができなかったのだろう。
▼国土地理院 「地理院地図」
34度18分53.57秒 132度29分42.46秒




タグ:広島県
あまたある観音崎でも、でんでんむしさんにとってこれこそが元祖・観音崎なのでせうね。
クリーンセンター! わが土手の景観を損ねている巨大施設にもそういう名称がついていますが、以前はこういうのをゴミ焼却場と呼んだもんですよね。ついでながら、高齢化社会で火葬場の処理能力が限界に達しているとか。地域住民の目をくらますには、いい名前をひねり出さなくちゃね。
地名のなかでも“字”というのは資料が少なく、ピンポイントだけに面白いです。
by knaito57 (2008-08-06 09:16)
@字名はふしぎですが、これは地名のもっとも最小単位を示すもので、云われなくつけるようなことは少ないと思うのですがねえ。
えーっと、「観音崎」は岬名多い順の第三位です。
これについては、実はもう少し後で書くつもりだったので…。
そう、行き当たりばったりに書いているように見えて、これでもいちおうの計画はあるのです。
ほら、8月6日前後でちゃんと広島湾の岬に来るようになっているでしょう?
by dendenmushi (2008-08-07 07:10)
はじめて「書き込み」します。我が家の近くのコースが紹介され興奮気味に見させて頂きました。それにしても、観音崎公園にはこれまで気づいていず、今朝久しぶりの遠出の散歩で確認に行ってきました。
周辺の海は、埋め立て・架橋と近代化の躍進を続けています。広島市内にあった名門広島女子商業中学・高校もここに移り、合併しない「坂町」の老人クラブも、きれいな公園・町並みの清掃ボランティア等元気いっぱいです。観音崎公園は確かにありました。入ってみましたが朝7時人影はありません。遊歩道を含め整備状況はよい方だと思います。
denndennmushiさんが言われるように海のすぐ近くにあるのに海が見えないようになっています。それでも冬にでもなれば木の隙間から少しは見えるのかなあと思ったりしました。この公園は隣の「クリーンセンター」の建設に合わせて作られたと思われますが、そもそもここは人が来ては困るというコンセプトで造成されたもとと思わざるを得ません。
歩道の反対側にあり見通しも悪くひっきりなしに国道31号を往復する車の間隙を逃さず無事公園にたどり着くのは容易なことではありません。数台分の駐車場はあるようですが、海水浴場(駐車料600円)の近くにあるためか鎖で閉鎖されています。こんな公園をよく見つけたものと岬巡り達人に感服しました。
なお、JR水尻駅は人工海浜のオープンもさることながら、単線のまま増え続ける運輸需要に対応して呉線機能強化(離合のための待避箇所の増加)のために作られました。呉線では同時に数カ所機能強化されましたが、駅舎の建設費はきっちり”地元負担”です。JR西日本は商売上手です。
by kichidenn (2008-08-09 11:30)
@kichidennさん、コメントありがとうございます。
そうですよね、広島市に合併しないでがんばっているのは、安芸郡府中町と安芸郡海田町、安芸郡熊野町と安芸郡坂町だけになってしまいましたからね。
確かに、あそこは横断するのがちょっと怖いですね。とにかく車の量が多いですね。
なるほど、水尻駅は離合待ち合わせ用だったのですか。
今後ともよろしくお願いします。
by dendenmushi (2008-08-11 07:30)