289 住吉岬=鶴岡市小岩川(山形県)あつみ温泉から“おけさおばこライン”を南に下って行くと… [岬めぐり]
住吉岬(まったく関係ないけど、「住吉つながり」で。8/1から東京は佃島の住吉神社の例大祭が始まります。見たことがないという人は、3年に一度のチャンスですからお見逃しなく。でんでんむしのお勧めは「広重も描いた巨大な幟」です)は、あつみ温泉からは一駅南の小岩川にある。ここも道路が岬の裾を回り込んで、どうもその道を通すために、岬の本体を削り取ってしまったかのようである。残った岬の先端部分だけが出島のようになっていて、羽越本線はその内側の小高い山の中をトンネルで抜けている。

もう少し電車やバスの本数があれば、ここにも降りて磯で遊んでいきたいところだが、この羽越本線も特急中心でダイヤが組まれているらしく、普通電車はめったにこない。バスに乗り換えるといっても、この駅で何十分も待たなければならない。こう電車の便もバスの便もよくないと、ちょこちょこと駅で乗り降りを繰り返し、岬を訪ねながら新潟をめざすということ自体が、ここでははなはだ不自由なのである。
たとえ本線であっても、たとえ地図には太い線で線路が描かれていても、いつも電車が走っているわけではないのだ。3時間や4時間、電車がこないからといって怒ってはいけない。JRの合理化は結構進んでいて、そういうところも、日本中ざらにあるのだ。
Mpionの地図では、ここに“おけさおばこライン”という表示がしてある。いうまでもなく、“おけさ”は「佐渡おけさ」で、“おばこ”は「秋田おばこ」からとったものだろう。誰がどうしてつけた名かは不明だが、ということは、秋田から新潟までの日本海の沿岸を結んでいる長い長い道を、そう名付けたものと見える。この場合、真ん中に挟まれた山形の立場はないように思われるが、いかがなものだろう。(これについて、さっそく通りすがりの庄内人であるLEXINGTONさんから、コメントをいただいた。「庄内おばこ」というのがあって、むしろ「秋田おばこ」よりこちらのほうが古いのだそうだ。なるほどねえ。)

庄内交通のあつみ温泉行きの便は、観光の目玉だけあって庄内空港からのシャトル便もあり、路線バスもこれでも本数が多いほうで、なんとかJRあつみ温泉駅までやってきた。さすがに、この駅には人がいて、売店もある。バスはさらに谷間の温泉街まで行くが、そこの萬国屋という宿には前にも泊まったことがある。

今回は岬めぐりなので温泉には寄らず、ここで貴重な午後の一便であるあつみ交通のバスに乗り換えて、途中の住吉岬を経由して鼠ヶ崎まで行くことにしたのだ。
その道中は、海岸線にところどころ岩が目立つ似たような景色が連続していて、晴天の海岸沿いを走りながら、これまで何度か電車で通ってもいつも雨か嵐か夕暮れ方で、薄暗い印象しかなかったのを初めて払拭した。




当然のように、ここにもまた芭蕉の「あつみ山や…」の句碑があるのだが、それももうどうでもよい、という暑さである。あつみ温泉駅は、海岸からも国道からも、いちだん高いところにある。バスに乗るときは、小銭がないと困るので、両替目的で駅の売店で、ラフランスアイスクリームやだだちゃ豆クッキーなどを買うことにした。
売店のおばさんは、アイスクリームはその箱から選んでくれというのでみると、そこには“藤沢周平文庫”なるものが、いかにも「思いついて試しに陳列してみました」みたいな感じで店開きをしている。こりゃ驚いた。

思わず、「ここで本を買う人もいるんですか」と、われながらバカな質問をしてしまった。駅の売店だからどこでも本ぐらい置いてある。買う人がいるから置いてあるのだろう。そして、発案者の思惑に従って、並んでいる本の中からまだ読んでいなかった一冊(『春秋山伏記』)を選んで、記念に買ってしまった。
鶴岡市も広くて、その市域は新潟県との県境にあたる鼠ヶ関まで続いている。当然あつみ温泉も、庄内のうち、“藤沢周平文庫”も大威張りでできるというわけだ。例によって、2005年の合併で温海町は鶴岡市に吸収された。
だが、バスは合併前のテリトリが異なることを反映したままのようで、庄内交通からあつみ交通の小型バスに変わった。鼠ヶ関はこのバスの終点ではなく、さらに先のなんとかいうところまで行くらしいが、名前をみてもそれがどこだかさっぱり見当がつかない。
鼠ヶ関で降りるとき、運転手さんが「念珠の松は見たことありますか。ここからすぐですよ」と教えてくれ、でんでんむしが降りた後のバスは空っぽのまま駅前の街角を回って行った。

▼国土地理院 「地理院地図」
38度35分42.44秒 139度33分52.81秒

東北地方(2008/06/20 訪問)

もう少し電車やバスの本数があれば、ここにも降りて磯で遊んでいきたいところだが、この羽越本線も特急中心でダイヤが組まれているらしく、普通電車はめったにこない。バスに乗り換えるといっても、この駅で何十分も待たなければならない。こう電車の便もバスの便もよくないと、ちょこちょこと駅で乗り降りを繰り返し、岬を訪ねながら新潟をめざすということ自体が、ここでははなはだ不自由なのである。
たとえ本線であっても、たとえ地図には太い線で線路が描かれていても、いつも電車が走っているわけではないのだ。3時間や4時間、電車がこないからといって怒ってはいけない。JRの合理化は結構進んでいて、そういうところも、日本中ざらにあるのだ。
Mpionの地図では、ここに“おけさおばこライン”という表示がしてある。いうまでもなく、“おけさ”は「佐渡おけさ」で、“おばこ”は「秋田おばこ」からとったものだろう。誰がどうしてつけた名かは不明だが、ということは、秋田から新潟までの日本海の沿岸を結んでいる長い長い道を、そう名付けたものと見える。この場合、真ん中に挟まれた山形の立場はないように思われるが、いかがなものだろう。(これについて、さっそく通りすがりの庄内人であるLEXINGTONさんから、コメントをいただいた。「庄内おばこ」というのがあって、むしろ「秋田おばこ」よりこちらのほうが古いのだそうだ。なるほどねえ。)

庄内交通のあつみ温泉行きの便は、観光の目玉だけあって庄内空港からのシャトル便もあり、路線バスもこれでも本数が多いほうで、なんとかJRあつみ温泉駅までやってきた。さすがに、この駅には人がいて、売店もある。バスはさらに谷間の温泉街まで行くが、そこの萬国屋という宿には前にも泊まったことがある。

今回は岬めぐりなので温泉には寄らず、ここで貴重な午後の一便であるあつみ交通のバスに乗り換えて、途中の住吉岬を経由して鼠ヶ崎まで行くことにしたのだ。
その道中は、海岸線にところどころ岩が目立つ似たような景色が連続していて、晴天の海岸沿いを走りながら、これまで何度か電車で通ってもいつも雨か嵐か夕暮れ方で、薄暗い印象しかなかったのを初めて払拭した。




当然のように、ここにもまた芭蕉の「あつみ山や…」の句碑があるのだが、それももうどうでもよい、という暑さである。あつみ温泉駅は、海岸からも国道からも、いちだん高いところにある。バスに乗るときは、小銭がないと困るので、両替目的で駅の売店で、ラフランスアイスクリームやだだちゃ豆クッキーなどを買うことにした。
売店のおばさんは、アイスクリームはその箱から選んでくれというのでみると、そこには“藤沢周平文庫”なるものが、いかにも「思いついて試しに陳列してみました」みたいな感じで店開きをしている。こりゃ驚いた。

思わず、「ここで本を買う人もいるんですか」と、われながらバカな質問をしてしまった。駅の売店だからどこでも本ぐらい置いてある。買う人がいるから置いてあるのだろう。そして、発案者の思惑に従って、並んでいる本の中からまだ読んでいなかった一冊(『春秋山伏記』)を選んで、記念に買ってしまった。
鶴岡市も広くて、その市域は新潟県との県境にあたる鼠ヶ関まで続いている。当然あつみ温泉も、庄内のうち、“藤沢周平文庫”も大威張りでできるというわけだ。例によって、2005年の合併で温海町は鶴岡市に吸収された。
だが、バスは合併前のテリトリが異なることを反映したままのようで、庄内交通からあつみ交通の小型バスに変わった。鼠ヶ関はこのバスの終点ではなく、さらに先のなんとかいうところまで行くらしいが、名前をみてもそれがどこだかさっぱり見当がつかない。
鼠ヶ関で降りるとき、運転手さんが「念珠の松は見たことありますか。ここからすぐですよ」と教えてくれ、でんでんむしが降りた後のバスは空っぽのまま駅前の街角を回って行った。

▼国土地理院 「地理院地図」
38度35分42.44秒 139度33分52.81秒




タグ:山形県
はじめまして 通りすがりの庄内人です
おばこおけさラインの「おばこ」は秋田おばこだけではなく庄内おばこの意味もあります
ちなみに古くから「庄内おばこ」という民謡があり、これが秋田に伝わり「秋田おばこ」という民謡が生まれたそうです
したがって、大衆の認知度としては、おばこ=秋田なのでしょうが、当地庄内においては未婚の庄内美人を意味する言葉なのです
なお、現在では日常会話で「おばこ」という言葉を聴くことはほとんどありません
by LEXINGTON (2008-07-26 09:38)
@LEXINGTONさん、ありがとうございます。そうなんですか。やはり、地元に聞いてみないとわからんもんですねえ。
大衆の一人として、でんでんむしも、「おばこ」といえば「秋田おばこ」と思っていました。
本家より分家の方が有名になって、定着してしまうということは、世間によくあることですが、これもそうだったんですね。
ところで、この住吉岬ですが、トンネルの上の方に神社がありますね。
この神社の名前は、なんというのでしょうか?
もし、ご存知でしたら、またお教えいただけるとありがたいです。
でんでんむしの得意の憶測では、これが「住吉神社」とかだと、おもしろくなるのかなあ、と…。因に、住吉神社は大阪に本家があるあの住吉さんです。
by dendenmushi (2008-07-27 08:59)
住吉岬はホームタウンから少し離れているため詳しくは判りませんが、住吉岬の近隣にある小岩川駅の近くには住吉神社があります(というか調べてみて住吉神社があることを知りました)
ご指摘の神社が住吉神社である可能性はかなり高いのではないでしょうか
そうなると住吉岬の名も住吉神社から来ているのでしょうね
おかげで勉強になりました
ご参考↓↓↓ 小岩川住吉神社の例大祭 神輿押し
http://kankolog.jp/cgi/log/22/374/
by LEXINGTON (2008-07-28 00:24)
@おおっ! やっぱり住吉神社だ。LEXINGTON さんのおかげで、でんでんむしの推測が的中していることが判明。
これですね。小岩川の神社といえば…。間違いないですよ。「浜から7号線を越えた広場に…」と、このホームページにはありましたし。やはり岬の名は神社から来ていることは明らかでしょう。
またまた推測ですが、ここが住吉岬で住吉神社であるということは、大阪の住吉さんとも無縁ではないでしょうね。北前船などがからむのかどうかはわかりませんが…。
どうも、ありがとうございました。
by dendenmushi (2008-07-28 10:09)
当地庄内は歴史的に上方との繋がりは深い処です
江戸時代の北前船(西廻り航路)は庄内米を堂島で取引することを目的に開設された航路です(開設時の終点は酒田)
地名でいえば由良、加茂(住吉岬より10km程北の海岸線)なんかは京都の香りですし、西日本で主流の丸餅文化の飛び地でもあります
by LEXINGTON (2008-07-28 17:56)
@マルモチ圏なんですか、庄内も…。いや、吉永小百合さんのJRのCMでも、庄内に京都文化が伝わっているといっていましたが…。そうか。「由良」「加茂」の名がそうとは、気がつきませんでした。
これは、住吉神社が住吉さんの支店であっても、まったくおかしくないですね。佃島の住吉神社もそうなのですが、それと無関係にこの名がつくという可能性は低いでしょうからね。
でんでんむしは、広島で当然マルモチで、お雑煮は白みそでした。
by dendenmushi (2008-07-30 07:14)