285 立岩崎=鶴岡市加茂(山形県)秋田県との県境の岬からこのテトラポットの岬まで40キロ [岬めぐり]
前項の秋田と山形の県境の岬から南への海岸線では、およそ40キロにわたって岬不毛地帯が続いている。酒田の飛島という離島にはあるが、それを別にすればほとんど目立った凹凸もない日本海沿いの海岸線で、やっと加茂まで来てこの岬がある。
鶴岡の駅前から、湯野浜温泉行きの始発バスに乗って、加茂港を過ぎた石切神社前で降りると、そのバスは空のまま日本海側の温泉地に向かって行ってしまった。立岩崎という岬は、防波堤のためにそのほとんどが姿を消している、とみたほうが正解らしい。
巨大なテトラポットが並ぶ突堤の渚を見れば、かすかに昔の岬の名残が伺えるようだ。立岩という割には、辺りを見回してもそれらしいものは見えない。工事でなくなったのか、それとも、それはこの先の神社付近の岩のことをさしているのか、よくわからない。とにかく海岸には岩は小さいのが点在しているだけだ。立岩の不在を埋め合わせるかのようなテトラポットである。
ここは山形県鶴岡市加茂港。北前船の寄港地であって、酒田から南下すること20キロの地点である。以前、出羽三山へ行った帰りに温海温泉に泊まったことがあるが、湯野浜は知らないので、ここ加茂も初めての地である。
鶴岡も、そのときもその前に来たときも通り過ぎただけで、今回初めて駅前のホテルに泊まったわけだ。
前日、吹浦から乗った遊佐交通のバスは、酒田駅前まで行く。そのほうが吹浦で電車を待つより酒田から鶴岡まで早く行けるのかと思ったのだが、結果的には、まったく早くなかった。しかし、もともと早く行くことが目的ではないから、この場合バスで初めての道と町を楽しみながら、がたがたと行くのがなによりなのだ。
『曽良日記』には確か砂浜や砂丘に足をとられながら行くような記述があったように思うが、鳥海山にも徐々に別れを告げ、酒田へ向かう道は日本海沿いに走る国道7号線のさらに内側に旧街道があり、そのさらに内側を羽越本線が通っている。バスはどうやら旧街道のほうを通っている。狭い道の両側には、古い民家が軒を連ねており、その家の古さを証明するかのようにところどころに古木大木がかぶさってくる。そんな道が延々と続き、大方飽きかけた頃に酒田の町に入る。
酒田の町も、通り抜けるばかりで四度目だ。個人的な感想だが、いつ来てもなんとなくこの町は寂しく哀しいような雰囲気を感じてしまう。こどもの頃にあった“酒田大火”の記憶がなぜか強いこともあるが、前回本間美術館へ行ったときも、今回本間家の屋敷の前を通ったときも、“殿様でも及ばぬ”本間家の繁栄が、決して酒田という町や地域全体を潤し、豊かにしたものではないことだけが、強く感じてならない。
それが寂しく哀しい原因である。空き地だけが目立ち、シャッターの降りたところばかりが目立つ駅前通りの商店街を歩いて、やっと空いている喫茶店らしいものを見つけて、焼サンドとコーヒーを注文する。考えてみれば、朝からなにも食べていなかった。しかし、酒田に限らず、コーヒーの不味いのにはまったくあきれる今日この頃である。
▼国土地理院 「地理院地図」
38度45分57.95秒 139度43分55.26秒
東北地方(2008/06/20 訪問)
鶴岡の駅前から、湯野浜温泉行きの始発バスに乗って、加茂港を過ぎた石切神社前で降りると、そのバスは空のまま日本海側の温泉地に向かって行ってしまった。立岩崎という岬は、防波堤のためにそのほとんどが姿を消している、とみたほうが正解らしい。
巨大なテトラポットが並ぶ突堤の渚を見れば、かすかに昔の岬の名残が伺えるようだ。立岩という割には、辺りを見回してもそれらしいものは見えない。工事でなくなったのか、それとも、それはこの先の神社付近の岩のことをさしているのか、よくわからない。とにかく海岸には岩は小さいのが点在しているだけだ。立岩の不在を埋め合わせるかのようなテトラポットである。
ここは山形県鶴岡市加茂港。北前船の寄港地であって、酒田から南下すること20キロの地点である。以前、出羽三山へ行った帰りに温海温泉に泊まったことがあるが、湯野浜は知らないので、ここ加茂も初めての地である。
鶴岡も、そのときもその前に来たときも通り過ぎただけで、今回初めて駅前のホテルに泊まったわけだ。
前日、吹浦から乗った遊佐交通のバスは、酒田駅前まで行く。そのほうが吹浦で電車を待つより酒田から鶴岡まで早く行けるのかと思ったのだが、結果的には、まったく早くなかった。しかし、もともと早く行くことが目的ではないから、この場合バスで初めての道と町を楽しみながら、がたがたと行くのがなによりなのだ。
『曽良日記』には確か砂浜や砂丘に足をとられながら行くような記述があったように思うが、鳥海山にも徐々に別れを告げ、酒田へ向かう道は日本海沿いに走る国道7号線のさらに内側に旧街道があり、そのさらに内側を羽越本線が通っている。バスはどうやら旧街道のほうを通っている。狭い道の両側には、古い民家が軒を連ねており、その家の古さを証明するかのようにところどころに古木大木がかぶさってくる。そんな道が延々と続き、大方飽きかけた頃に酒田の町に入る。
酒田の町も、通り抜けるばかりで四度目だ。個人的な感想だが、いつ来てもなんとなくこの町は寂しく哀しいような雰囲気を感じてしまう。こどもの頃にあった“酒田大火”の記憶がなぜか強いこともあるが、前回本間美術館へ行ったときも、今回本間家の屋敷の前を通ったときも、“殿様でも及ばぬ”本間家の繁栄が、決して酒田という町や地域全体を潤し、豊かにしたものではないことだけが、強く感じてならない。
それが寂しく哀しい原因である。空き地だけが目立ち、シャッターの降りたところばかりが目立つ駅前通りの商店街を歩いて、やっと空いている喫茶店らしいものを見つけて、焼サンドとコーヒーを注文する。考えてみれば、朝からなにも食べていなかった。しかし、酒田に限らず、コーヒーの不味いのにはまったくあきれる今日この頃である。
▼国土地理院 「地理院地図」
38度45分57.95秒 139度43分55.26秒
東北地方(2008/06/20 訪問)
タグ:山形県
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