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282 入御岬=葦北郡芦北町大字海浦(熊本県)そこには道もなく行けない岬ながら… [岬めぐり]

 熊本県の南部の海岸線は、芦北以南水俣までだけが、ちょっとしたリアス式海岸の様相を呈している。断崖絶壁といった豪快な風景こそないものの、いくつもの山並みが八代海になだれ込んで、大小の入江や湾をつくっている。自然、このあたりにだけ岬も集中してあることになるのだが、南から佐敷(さしき)、海浦(うみのうら)、田浦(たのうら)、と続いている湾をめぐっている。
 このうち海浦では、電車から眺めるだけで今回は通過したのだが、ここがいちばん小規模な湾なのでとりあえずおいといて、佐敷と田浦は大きさではどっこいどっこいだが、海に向かって大きく開いた田浦よりも、二つの岬が向かい合っていて自然の堤防をつくっているような佐敷のほうが港には向いていたように思える。
 湾の中心を直線距離で計ると7キロほどしか離れていないこの二つを、改めて地図を眺めて比べてみる気になったのは、「野坂の浦」の本家争いが、やはり気になったからである。
 どうして、そういうことになったのだろう。
 だいたいが、お金とか体面とか肝心なことはまったく気にならない。そのくせどうでもいいことがやたら気になるタイプなのである。
 御番所鼻から御立岬へ向かって歩いて行くと、開けた湾の向こうには常に、入御岬が見えている。
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 その沖に浮かんでいるのは殿島。「との」なのか「でん」なのか、はたまた「しんがり」なのかわからない。
 ここは同じ芦北町でも海浦に属する。岬と島がある周辺は山ばかりで、国道3号線もおれんじ鉄道の線路も、ここを避けるようにして内側を走っていて、ほかに海岸を通る道もない。つまり、近いけれど、そこに見えているけれど、行けない岬。それが入御岬なのである。
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 歩いて行くうちに、岬の見え方が変わってきた。入御岬の向こうに見えてきたのは、海浦の南の井手の鼻である。(またまた、ZENRIN(末尾のbuzzmap参照)では「入御鼻」と国土地理院とは違う表記にしているが、これはいったいどんな根拠に基づいているのだろうか、それもだんだん気になってきた。)
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 さて、地図を眺めながら、そして、二つの「野坂の浦」の案内板をあわせ見て考えたことはなにか。これがまた、でんでんむしお得意の、揣摩憶測であり、推理に過ぎないことは、改めて言うまでもない。
 それもやはり、合併と関係があるのではないか。芦北町と田浦町が合併する以前から、田浦町は「こここそが真の野坂の浦だ」と、芦北町に対抗して主張していたに違いない。それは町の教育委員会が立てた古墳や長田王の歌碑の案内板をみれば、容易に想像できる。
 芦北町と田浦町が合併することになったのは、その規模や諸条件からどうみてもこれは“吸収合併”である。今に残る歴史的史料の厚みを比べてみても、佐敷を中心とする前芦北町のほうが前田浦町よりも、有利に見えることは明らかだ。
 しかし…と、佐敷の知恵者は考えた。
 合併のためには、「野坂の浦」については譲って、田浦に花をもたせたほうがよい…と。佐敷には熊本県の案内板があればそれだけで充分ではないか…。そこで、田浦町教育委員会が平成14年に立てた案内板はそのまま残して、町の名前だけを「芦北」に替えた。
 …とまあ、ばかばかしい、くだらないことをごちゃごちゃとと笑わば笑え。いろんなことをあれこれ考えながら歩いて行く、それがでんでんむしの岬めぐりなのだ。

▼国土地理院 「地理院地図」
32度20分38.99秒 130度28分59.14秒
nyugomisakiM.gif
dendenmushi.gif九州地方(2008/04/20 訪問)

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タグ:熊本県
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