267 鳥足岬=宇城市不知火町大見(熊本県)ビニールハウスに不知火の海 [岬めぐり]
宇土半島の南側は、もともとはヒダのように山と谷と入江が連続している凸凹に入り組んだ地形が続いていた。ここらに残っている岬は、それが深く切れ込んだ入江の先端で、命名を必要とするほどのランドーマークであったはずである。
その入江は、長い間に川の堆積と、人の暮らしの必要から、徐々に海から浅瀬になり、浅瀬から埋立て地になり、畑になり人が住むようになった。
その典型のひとつを、宇城市不知火町大見に見ることができる。
集落が固まってあるのは、今は谷となった、かつての入江の最深部で、道路もずっと海岸から離れて集落のある山沿いに寄っている。その真ん中を流れる大見川は、ほんの小さな流れになっているが、これでもいったん雨でも降れば、あっという間に濁流が踊る急流になって、八代海に注ぐ。
そうして開けた海側の広い土地には、大きなビニールハウスの群れが、びっしりと立ち並んでいる。その向こうに、鳥足岬がある。
観音岬と鳥足岬の間は、ほんの600メートルほどだが、道路を通っていくと、その何倍もかかる。ショートカットして、海岸をまっすぐ突っ切れないかと思ったが、そこには道がない。中央には大見川が流れているが、橋はビニールハウスの真ん中に小さいのがひとつだけある。
道路の小山は“デコポンの里”という看板を背負っていたので、ここ不知火町はそれが名産らしい。ビニールハウスの間を、近道を探してむりやり抜けて行く。畑の所有者以外の立入を禁ずるといういかめしい看板もあるが、どうやらこれがデコポンのハウスらしい。今の時期、その特徴のある形をした実が生っているのかどうかは知らないし、厳重に包み込まれたハウスの中はわからない。
鳥足岬の上は、ちょっとした園地が広がっていて、ついこの間までは咲いていたのに残念でしたとでもいうような、まだいくらかの花も葉の間に残した桜の木が囲んでいる。ここから観音岬のほうを見れば、そこにはフジの花がひとつ。
同じ不知火町だが、この鳥足岬を越えると、字名が大見から変わって松合となるが、そこに救の浦という小さな漁港がある。ここは沖を真っすぐ走る道路が橋になって囲んでいるが、古い石組みの堤防が、非常に印象的であった。これも、まるで岬だ。
いや、石の堤防だけではない。その背後に展開する家々とその奥に連なる山や畑の景色がなんともいえない。一幅の絵のようだとは、こういうことをいうのだろう。あるいは、潮が満ちていたほうが、もっとよかったのかも知れないが、引き潮の泥の上に取り残された漁船も、またいい。
自然の景観もさることながら、やはり絵には人間の暮らしの彩りも必要なのだ。
申し遅れていましたが、この熊本シリーズから、末尾に国土地理院の25000分の1の地形図をつけるようにしています。
ZENRINは言うに及ばす、Mapionでも冒頭に書いたような地形は、読み取れない。だが、国土地理院の地形図なら、それがはっきりとわかるのである。
そんなことはハナからわかっていたことだが、ネットで参照する日本の地図としては、従来の国土地理院が提供していた「ウォッちず」の閲覧サービスは、非常に使いづらくて、どうしょうもなかったのである。それで、やむを得ず、ネットで簡単に見られていちばんいいのがMapionという結論に達して、これを岬めぐりの標準地図にしてきた、という経緯があった。
ところが、国土地理院は、閲覧システムを新しくし、大幅に改善した。これで、やっと、岬めぐりの標準地図も、国土地理院の地図を採用できるようになった、というわけである。
ZENRINはbuzzmapに連動させている関係上、まだいちおう入れておくことにせざるを得ない。「新ウオッちず」は縮尺の変更に幅がないので、それはやはりMapionのほうでカバーしなければならない。なかなか複雑なのだ。
▼国土地理院 「地理院地図」
32度37分22.61秒 130度35分36.20秒
九州地方(2008/04/18 訪問)
その入江は、長い間に川の堆積と、人の暮らしの必要から、徐々に海から浅瀬になり、浅瀬から埋立て地になり、畑になり人が住むようになった。
その典型のひとつを、宇城市不知火町大見に見ることができる。
集落が固まってあるのは、今は谷となった、かつての入江の最深部で、道路もずっと海岸から離れて集落のある山沿いに寄っている。その真ん中を流れる大見川は、ほんの小さな流れになっているが、これでもいったん雨でも降れば、あっという間に濁流が踊る急流になって、八代海に注ぐ。
そうして開けた海側の広い土地には、大きなビニールハウスの群れが、びっしりと立ち並んでいる。その向こうに、鳥足岬がある。
観音岬と鳥足岬の間は、ほんの600メートルほどだが、道路を通っていくと、その何倍もかかる。ショートカットして、海岸をまっすぐ突っ切れないかと思ったが、そこには道がない。中央には大見川が流れているが、橋はビニールハウスの真ん中に小さいのがひとつだけある。
道路の小山は“デコポンの里”という看板を背負っていたので、ここ不知火町はそれが名産らしい。ビニールハウスの間を、近道を探してむりやり抜けて行く。畑の所有者以外の立入を禁ずるといういかめしい看板もあるが、どうやらこれがデコポンのハウスらしい。今の時期、その特徴のある形をした実が生っているのかどうかは知らないし、厳重に包み込まれたハウスの中はわからない。
鳥足岬の上は、ちょっとした園地が広がっていて、ついこの間までは咲いていたのに残念でしたとでもいうような、まだいくらかの花も葉の間に残した桜の木が囲んでいる。ここから観音岬のほうを見れば、そこにはフジの花がひとつ。
同じ不知火町だが、この鳥足岬を越えると、字名が大見から変わって松合となるが、そこに救の浦という小さな漁港がある。ここは沖を真っすぐ走る道路が橋になって囲んでいるが、古い石組みの堤防が、非常に印象的であった。これも、まるで岬だ。
いや、石の堤防だけではない。その背後に展開する家々とその奥に連なる山や畑の景色がなんともいえない。一幅の絵のようだとは、こういうことをいうのだろう。あるいは、潮が満ちていたほうが、もっとよかったのかも知れないが、引き潮の泥の上に取り残された漁船も、またいい。
自然の景観もさることながら、やはり絵には人間の暮らしの彩りも必要なのだ。
申し遅れていましたが、この熊本シリーズから、末尾に国土地理院の25000分の1の地形図をつけるようにしています。
ZENRINは言うに及ばす、Mapionでも冒頭に書いたような地形は、読み取れない。だが、国土地理院の地形図なら、それがはっきりとわかるのである。
そんなことはハナからわかっていたことだが、ネットで参照する日本の地図としては、従来の国土地理院が提供していた「ウォッちず」の閲覧サービスは、非常に使いづらくて、どうしょうもなかったのである。それで、やむを得ず、ネットで簡単に見られていちばんいいのがMapionという結論に達して、これを岬めぐりの標準地図にしてきた、という経緯があった。
ところが、国土地理院は、閲覧システムを新しくし、大幅に改善した。これで、やっと、岬めぐりの標準地図も、国土地理院の地図を採用できるようになった、というわけである。
ZENRINはbuzzmapに連動させている関係上、まだいちおう入れておくことにせざるを得ない。「新ウオッちず」は縮尺の変更に幅がないので、それはやはりMapionのほうでカバーしなければならない。なかなか複雑なのだ。
▼国土地理院 「地理院地図」
32度37分22.61秒 130度35分36.20秒
九州地方(2008/04/18 訪問)
タグ:熊本県
“不知火”もイメージをかき立てますね。こうして入江の変貌・変遷を知ると、知らない(不知)の土地と画像が意味をもってくる。自然の景色やめずらしい光景もいいけれどそれは絵はがき写真に過ぎず、地理・歴史の視点が加わることによって息づいてくるやうです。「自然の景観もさることながら、やはり絵には……」に同感。
妻が八代出身の人と懇意で、よくいろんな柑橘類(子どもの頭ほど大きいのや見たこともない珍果実など)をいただく。色濃く甘い小ぶりなデコポンはそんな事情で知っていました。また気候変化や輸入フルーツに対応すべく次々と新品種を開発している──などと聞くと、悠久の歴史をもつこの地も忙しいことになっているんだなあと思います。
by knaito57 (2008-05-29 08:04)
@「デコポン」。それが正しいんですよねえ。なんと本文では「デポコン」と書いていました。コレ間違いだよねえ。このまま残しておくか。それともやっぱり、恥ずかしいから訂正しておこうかしら?
knaito57さんのコメントをみて、やっと気がついた。
by dendenmushi (2008-05-30 06:45)
ビニールハウスの中はブドウだと思います。
by taichiattoragau (2012-03-28 15:23)
@ええっ、ブドウなんですか? そうですか、それはまた意外なものが…。
by dendenmushi (2012-03-29 07:16)