262 長崎鼻=熊本市西区河内町船津(熊本県)寂れてしまった温泉と名前も消えてしまった岬 [岬めぐり]
昨夜もテレビでは『デイ・アフター・ツモロー』の再放送を流していたが、最近素人目にも気象の異常が実感されるようなことが多い。5月になって3月並みの寒さがあるかと思えば、4月には日本列島を大きな低気圧が連続して通過するということがあった。熊本を訪れたのは、ちょうどその低気圧が九州をぎりぎり通り過ぎるかどうかという、まことに微妙なタイミングになった。
前の低気圧がぐずぐずしていたので、羽田からの飛行機が飛ぶかどうかも心配されたが、それはなんとかやり過ごしたと思ったら、熊本行きの朝の便だけが欠航になってしまった。なんじゃ。それは。その欠航は天気とは関係がなく、飛行機のやりくりに齟齬があったらしい。
ANAなのになぜか振り替え手続きはスカイネットの窓口でしろという。どういうわけかと、勝手にかんぐってみると、最近では普通になっている機体の貸出しで、スカイネットから返ってくるのが、何らかの理由で遅れ、熊本便の運航に間に合わなくなった、したがって、その尻拭いはスカイネットがする、おそらくはそんなところか。しかし、機体の貸出しなんて、そのたびに塗装なんかやり直すのだろうか。世の中、だんだん複雑になって、わからんことがどんどん増える。ま、そんなことはどーでもいいので、とにかくいちばん端っこの1番窓口で、どうにか福岡行きの便のチケットと、そこから先、熊本までの運賃として3000円をもらった。
日本列島の半分近くをすっぽりと覆うような大きな低気圧の上を、飛行機はひとまたぎのように越えて飛ぶ。いつもの雲とはちょっと違う雲が、びっしりと白いアクリル板のように貼り付いていた。
福岡も雨だった。新八代から九州新幹線と連絡するという「つばめ」に乗って、とにかく熊本へ向かう。当初の計画では、熊本空港へ降りたら、まず阿蘇へ行ってみるつもりだった。もちろんそれは岬めぐりとは関係がないのだが、なにしろ、でんでんむしにとってはこの歳になるまで、日本中で足を踏み入れたことがない唯一の県が、この熊本県だったので…。
ただ、熊本に降りられたとしても、この雨ではどの道その計画は変更せざるを得なかった。熊本駅で「つばめ」を降りると、ロッカールームに荷物を入れ、傘とデジカメだけ持って、駅前から玉名方面に行くバスに乗って、河内へ向かう。熊本県の北の海岸は荒尾市なのだが、荒尾にも玉名にも岬はなく、この熊本市内の河内温泉の長崎鼻が一番北よりの岬になる。
熊本へ来て最初の岬が長崎だった、というわけだ。
この岬の名は、Mapionでは縮尺の数字を大きくしないと出てこない。車の往来が結構激しい国道501号線のバス停から、河内川に沿って河口に向かう。ここには温泉があるというが、いまではもうかなり寂れているらしい。古い神社の下にバス停の標識が赤錆びて立っている。その停留所の名前もよく読み取れないが、かろうじて「河内温泉入口」とわかる。河内川の河口近くは港になっていて、たくさんの船が係留しており、その向こうの雨に煙る山はミカンか何かのような段々畑が広がっているように見えている。
港があり、温泉旅館だった建物が取り壊されたらしい跡があるかと思えば、民宿のようなた獲物やかつてはいかにも盛んであったという雰囲気をもった料理旅館のようなものもあり、確かにここが温泉だったことを偲ばせる。今、温泉は南側の温泉センターのようなものに衣替えしているようだが、長崎鼻自体は実際にはもうほとんど埋立てで消えている、というべきなのかもしれない。Mapionの詳細図にもその名がないのは、そういう意味なのかも知れない。
それでも、倉庫のような建物が建つ小さな埋立地と港の堤防がつながるところに立つと、小さな山が海に向かって降りてきて、ここが岬だったことを教えてくれる。
その浜には薄い黄色やピンクに透き通ったような、きれいな貝殻がたくさん散らばっている。サクラガイでもないしヒオウギガイでもないが、名前も知らぬこの貝殻を手に取ってみると、なんとも懐かしい思いがあふれ出してくる。
港内の小さな堤防の先には赤い塗料が残るタイを抱え釣竿をもった恵比寿様が、エビス顔で海のほうを見ていた。
雨が相変わらず降り続いていて、どうやら九州では低気圧が通りすぎたはずなのに、天気の回復は遅れているようだ。
▼国土地理院 「地理院地図」
32度49分44.49秒 130度34分44.44秒
九州地方(2008/04/17 訪問)
前の低気圧がぐずぐずしていたので、羽田からの飛行機が飛ぶかどうかも心配されたが、それはなんとかやり過ごしたと思ったら、熊本行きの朝の便だけが欠航になってしまった。なんじゃ。それは。その欠航は天気とは関係がなく、飛行機のやりくりに齟齬があったらしい。
ANAなのになぜか振り替え手続きはスカイネットの窓口でしろという。どういうわけかと、勝手にかんぐってみると、最近では普通になっている機体の貸出しで、スカイネットから返ってくるのが、何らかの理由で遅れ、熊本便の運航に間に合わなくなった、したがって、その尻拭いはスカイネットがする、おそらくはそんなところか。しかし、機体の貸出しなんて、そのたびに塗装なんかやり直すのだろうか。世の中、だんだん複雑になって、わからんことがどんどん増える。ま、そんなことはどーでもいいので、とにかくいちばん端っこの1番窓口で、どうにか福岡行きの便のチケットと、そこから先、熊本までの運賃として3000円をもらった。
日本列島の半分近くをすっぽりと覆うような大きな低気圧の上を、飛行機はひとまたぎのように越えて飛ぶ。いつもの雲とはちょっと違う雲が、びっしりと白いアクリル板のように貼り付いていた。
福岡も雨だった。新八代から九州新幹線と連絡するという「つばめ」に乗って、とにかく熊本へ向かう。当初の計画では、熊本空港へ降りたら、まず阿蘇へ行ってみるつもりだった。もちろんそれは岬めぐりとは関係がないのだが、なにしろ、でんでんむしにとってはこの歳になるまで、日本中で足を踏み入れたことがない唯一の県が、この熊本県だったので…。
ただ、熊本に降りられたとしても、この雨ではどの道その計画は変更せざるを得なかった。熊本駅で「つばめ」を降りると、ロッカールームに荷物を入れ、傘とデジカメだけ持って、駅前から玉名方面に行くバスに乗って、河内へ向かう。熊本県の北の海岸は荒尾市なのだが、荒尾にも玉名にも岬はなく、この熊本市内の河内温泉の長崎鼻が一番北よりの岬になる。
熊本へ来て最初の岬が長崎だった、というわけだ。
この岬の名は、Mapionでは縮尺の数字を大きくしないと出てこない。車の往来が結構激しい国道501号線のバス停から、河内川に沿って河口に向かう。ここには温泉があるというが、いまではもうかなり寂れているらしい。古い神社の下にバス停の標識が赤錆びて立っている。その停留所の名前もよく読み取れないが、かろうじて「河内温泉入口」とわかる。河内川の河口近くは港になっていて、たくさんの船が係留しており、その向こうの雨に煙る山はミカンか何かのような段々畑が広がっているように見えている。
港があり、温泉旅館だった建物が取り壊されたらしい跡があるかと思えば、民宿のようなた獲物やかつてはいかにも盛んであったという雰囲気をもった料理旅館のようなものもあり、確かにここが温泉だったことを偲ばせる。今、温泉は南側の温泉センターのようなものに衣替えしているようだが、長崎鼻自体は実際にはもうほとんど埋立てで消えている、というべきなのかもしれない。Mapionの詳細図にもその名がないのは、そういう意味なのかも知れない。
それでも、倉庫のような建物が建つ小さな埋立地と港の堤防がつながるところに立つと、小さな山が海に向かって降りてきて、ここが岬だったことを教えてくれる。
その浜には薄い黄色やピンクに透き通ったような、きれいな貝殻がたくさん散らばっている。サクラガイでもないしヒオウギガイでもないが、名前も知らぬこの貝殻を手に取ってみると、なんとも懐かしい思いがあふれ出してくる。
港内の小さな堤防の先には赤い塗料が残るタイを抱え釣竿をもった恵比寿様が、エビス顔で海のほうを見ていた。
雨が相変わらず降り続いていて、どうやら九州では低気圧が通りすぎたはずなのに、天気の回復は遅れているようだ。
▼国土地理院 「地理院地図」
32度49分44.49秒 130度34分44.44秒
九州地方(2008/04/17 訪問)
タグ:熊本県
2008-05-18 06:55
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コメント(2)
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福岡も雨だった──というから、変だ、妙だと思っていたら、やっぱり「♪♪長崎は今日も雨えだあたあ」で落ちつきましたね。長崎(鼻)が26もあって全国第5位というデータに、先人(日本人)の可愛さを感じます。
全県踏破、おめでたうございます。拙者は飛行機を気軽に乗り回すわけにいかないので、せめて山手線全駅下車を達成したいと思うのですが、都内に出るのが年に数回という隠居暮らしでは何年先になることやら……。
by knaito57 (2008-05-19 18:50)
@そうです、そうです。福岡も熊本も、今日までは雨でした。そう、この長崎鼻は、ナゾですね。
全県踏破などとは、営業などで各地を飛び回っている人から見れば、なんていうことはないのでしょうね。わたしの場合は、どういうわけか、熊本にはこれまで縁がなかった…。
by dendenmushi (2008-05-22 08:02)