256 野原崎＝石垣市字桃里（沖縄県）“桃里ものいわず岬のみあり”

　伊原間から石垣市街までの国道390号線は、並木などもなかなかきれいに整備された道である。これも特定財源とやらのおかげなのか。世間ではガソリンがどうのと騒いでいるが、車を持たず免許もないでんでんむしには無縁のことである。世間の右往左往にワレカンセズという分野があるのも、なんとなくへそ曲がり的には気分のいいものである。
　けれども、この石垣島一日一周岬めぐりは、バスがないここではとてもクルマなしでは実現できない。レンタカーの運転を頼んで回っているわけだが、こんなそう大きいともいえない島を一回りするにも、車で走り抜けるのと、バス停を探し時刻表を確かめながらてくてく歩くのとでは、風景の見え方というものがまったく違っていて、そしてまた岬の見方も微妙に異なってくる。
　今回もまた、そのことを改めて確認させられた。
　玉取崎を過ぎて、国道を南下していくと、桃里という字のついた集落を抜ける。ところが、今思い返してみても、この辺りの景色がまったく浮かんでこないのである。見ていないはずはないのだし、ここを通るのも初めてではない。それなのにどんなところだったのか、さっぱりイメージが湧いてこない。
　「桃里」「トウリ」…。水戸黄門は「梅里」だしなあ。そうだ、「トウリモノイハズ・ソノシタオノズカラケイヲナス」というのもあったなあ。でもあれは「桃李」だよな。それにしても、桃の里とはなんとも風雅な桃源郷を思わせるような名だ。なのにこの付近の人は小学校にも集会所にも「伊野田」という名を使っているのはなぜだろう…。…と、せいぜい文字遊び語呂合わせくらいしか連想しない。
　イメージがないのは人に出会わないからでもあろうか。集落を過ぎたところで、国道と海岸が離れていく。ここで道を細い農道に入って行かないと、野原崎には近づけない。


　野原崎の上は、広い畑が続いており、その向こうに海が見えてきた。なるほど、確かに野原の岬である。だが、まるっきり原野の野原ではない。黒糖の生産はこの石垣島でも行なわれていて、ここらは“ざわわざわわ”のサトウキビ畑である。もっとも、サトウキビの刈り取りは冬場の仕事なので、もう3月になったというこの時期は、どこでも収穫の終わった後なのだ。見渡す限り人の姿はないが、白い軽トラックが一台止まっている。

　玉取崎のほうから見たところと、玉取崎のほうを見たところ。


　これは、今日一日お世話になったレンタカーである。とにかくおかげさまで、一日で石垣島一周岬めぐりできました。ご苦労さんでしたね。
　最初にも書いていたが、石垣島の岬は、島を野原崎の北東から観音崎（富崎）の南西に斜め半分に切るとすると、その北西側半分に集中しており、ここから先、南側には岬はないので、これが最後の岬となる。
　桃里もまた物言わず、白保に抜けるまで、確かに一人の人影も見なかったような気がしてきた。

▼国土地理院　「地理院地図」
24度26分46.29秒 124度15分26.06秒

沖縄地方（2008/03/05　再訪）

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タグ：沖縄県

コメント 2

すごいですなあ。“土手の蛙”の拙者、石垣島にこんなにたくさん岬があるなんてちっとも知らなかった。あらためて「データベース」を見たら、なんと岬の数は堂々全国第７位！　石垣島にかぎってもこれだけ充実した記事と画像は他にないでせう。
北海道に比べると（無意味か）岬の名前に沖縄らしさが少ないこと、観音崎や大崎があるのを意外に感じます。
桃、桃、桃……でんでんむしさんの苦吟に敬意を表して、拙者も脳味噌を絞ったら。
・「桃之夭夭」とうのようよう、という頭の部分と意味だけ覚えている漢詩
・桃谷順天堂のラジオコマーシャル
・桃色遊戯。味わいのある言葉だったが、今では死語か
by NO NAME (2008-05-06 08:58) 

＠確かにね。北海道はアイヌのことばに由来する名が多いので独特ですが、それに比べると、沖縄のほうが「本土並み」です。ただ、読み方にはこれがまた…。
　「桃里」でなく「桃」だけならいっぱいありますが、やっぱり「桃色吐息」でしょう。
　今日から沖縄本島。でも少しだけね。
by dendenmushi (2008-05-08 08:24)