250 北の崎=石垣島・伊原間(沖縄県)“名物にうまいものなし”というが… [岬めぐり]
北端の平久保崎へ伸びる半島は、その付け根のところともう一か所、明石の集落のあるところで、細くくびれている。はんな岳と久宇良岳という南北二つの山に挟まれたそこは、道の脇には花壇なども設けてあったりして、人家もさほどに密集した感じでもなく、なんとなく余裕をみせている。そんな感じは、石垣島全体にいえることであり、あるいは八重山全体にいえることでもある。まあ、とにかくのんびりとした風情がそこらに漂っている。それが、都会からやってきた人間にはたまらないのだろう。
北の崎は、ほとんど目立たない岬で、集落からは少し南にはずれた開拓地の先にある。その姿は、むしろ野底石崎の側から見たほうが、それらしく見える。が、実をいうとこの写真はちょっとビミョーなのであるが、このさい深く追及しないことに…。
この明石(これも無条件に“あかし”と読んでしまうが、どうやらここでは“あかいし”だったような…)では、以前に来たときに小さな食堂でそばを食べたことがあった。
食通でもグルメでもナンでもないので、食べることには入れ込みは少ないほうだと思うが、いかな名物といわれても不味いものはまずい。最初に八重山へ来て西表島で初めて食べた“ゴーヤチャンプル”は、それまで体験したことのなかった味で、いささか舌が驚いたことがあるが、沖縄そばのほうはまあそんなに違和感はなかった。この沖縄のそばにも、さまざまなバリエーションがあるし、それぞれ店による特徴もあるので、一概には言えない。今では、東京にもソーキそばを食べさせる店はいくらもあるので、もはやめずらしくも何ともないが、ここの八重山そばがなかなかおいしかった。もうひとつ、石垣市の中心街から少し入ったところにある丸二そばのソーキそばもなかなかである。
まあ、これも単にゴーヤよりもそばや豚肉のほうに馴染みがあったというだけのことであろう。
そんなわけで、今回もまたその食堂を訪ねてみると、場所が少し移動しているうえに、すっかりリニューアルして広くて立派な、あかぬけた店になっていて、民宿まで併営している。こりゃ驚いた。
何台も車が停められる駐車場もできていて、玄関の脇の広い軒先は喫煙可らしい。沖縄の民宿やお店では、オープンカフェが流行る前から、こういうスタイルの空間利用はあったようだ。室内のテーブル席も大幅に増えていて、その奥には畳敷きの場所もあって、子供用の小さな椅子までいくつも用意されている。
この店は、島の人にも評判の店で、よく内地からの客を案内してくる人もあるらしいし、観光ガイドブックなどにも必ず出ているので、有名らしいのだ。もっとも、石垣も市の中心部をちょっとはずれると、もういろんな店が軒を連ねるという都会人がイメージするような場所ではまったくなくなるので、外食しようにもほかに選択の余地はあまりないのかもしれない。
昔は、おじさんとおばさんがひっそりとやっていたという感じだったが、今回来てみると代替わりしたのか、若い人たちが店を切り盛りしている。先代のつくりあげてきた評判を、しっかりと受け継いで守っているようだ。こういうことは、それがたとえ自分にまったく関係ないことであっても、なんとなくうれしい。
▼国土地理院 「地理院地図」
24度33分37.56秒 124度17分1.46秒
沖縄地方(2008/03/05 再訪)
麺文化は東南アジアからやってきた──と聞きかじったことがありますが、この辺も独自のものがあるようですね。「くいだおれ」が立ち行かなくなる一方で、こういう店が受け継がれているとは「なんとなくうれしい」に同感。
by knaito57 (2008-04-28 07:13)
@近頃では石垣島でも昔からある中心街の店の中にはシャッターを降ろしているところも散見されます。日本全国どこにでもある共通したその光景が、ついにこの南端の市までおよんだか、という感じです。
その一方では、本土の大資本のチェーン店も盛んに出店しており、例の「名ばかり管理職のハンバーガー屋」も、石垣に出店したと話題になったことがありました。
どこへいっても、同じ店しかないというのはつまらないです。
by dendenmushi (2008-04-29 06:48)