248 野底崎＝石垣市字野底（沖縄県）沖縄の岬は琉球石灰岩がつくる

　“また地名か”とお叱りを受けそうだが、また地名である。「野底」は「ぬすく」と読む。野底には野底崎と野底石崎と、ふたつの岬がある。


　沖縄地方の呼び方は、とくに独特なので、“これらの多くは漢字の読みということではなく、伝わっている言葉の音に漢字を当てた、というだけなのではないだろうか”、という気がしてくる。もちろん、これはあてずっぽうの思いつきに過ぎない。
　石垣島も米原を過ぎると、そこから北北東に20キロ先の平久保崎まで、細長い半島になる。東シナ海に面した海岸線は、まれにサンゴの砂浜があるが、ほとんどは細かい凸凹が続いている。これは、この地方独特の琉球石灰岩という地盤形成による。琉球石灰岩は、沖縄地方では石垣から墓まで広く使われている石材だが、要するにサンゴ礁が岩になったもので、ほかの変成岩が億単位の歴史をもつのに対して、せいぜい10万年くらいの間に形成されたという特徴がある。それに、サンゴ礁は浅い海でできるものだから、ゆっくりと隆起と沈降を繰り返していたこの琉球弧の描くカーブが、今の南西諸島を浅い陸続きになってつないでいた。
　サンゴ礁でできた琉球石灰岩は小さな穴が多く、もろいので、波の侵食などを受けやすい。よく沖縄の海岸の写真で、海の中に浮かぶ岩の海面部分がえぐり取られたように、へこんでいるのを見た人は多いだろう。こういうオーバーハング型の岩が海岸線をつくっているのは独特の風景であるが、野底崎もそうなっている。それは、遠くからでないとわからないので、これは平久保のほうから望遠でみたところである。よーくその先っちょに注目。

　野底崎の先端には、ぴょこんと岩が飛び出している。こういう地形も、かつてはそれがサンゴ礁にあったドームだったのだろうか。
　そのでかいのが野底岳なのかもしれん。シロウトはすぐにそう短絡するが、実際のところはこういう山はまた別の生成過程があるものなのだろう。標高300メートル足らずのこの山は、伝説でも生みそうなきれいなとんがり帽子である。
　そして、ちゃんと伝説はあった。

　「ヌスクマーペー」の伝説は、黒島（石垣島の南西20キロにある）に住んでいた恋仲の男女が、琉球王朝の行なった強制移住政策によって引き離され、女性のほうが新しい村をつくるため野底に移される。恋人と故郷を思うマーペーは、高い山に登れば故郷が見えるかも知れないとやってくるが、ちょうどその方角には沖縄でいちばん高い於茂登岳（525メートル）が立ちはだかって邪魔をしていて見えない。悲嘆に暮れて祈る姿のまま彼女は岩になり野底岳になったのだという。

▼国土地理院　「地理院地図」
24度29分55.28秒 124度13分45.94秒

沖縄地方（2008/03/05　再訪）

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タグ：沖縄県

コメント 2

そうか、石灰岩のなせるワザか。いわれてみれば世界の奇形には同じ理由で形成されたものがいろいろありますね。でも拙者には、そういう科学的アプローチよりも伝説のほうが面白いですな。山や岩など目だつ異形にまつわる似たような伝説はアイヌにもオーストラリアにも、おそらく世界各地にあるはずで、“人類共通の発想法”に興味を感じるのです。
先日『恐怖の岬』という古い映画を観ました。G・ペックが「R・ミッチャムとの水中格闘
シーンの撮影がこわかった」ともらしたあれですよ。画面には岬らしいショットはなかったけれど、“恋人岬”“バンザイ岬”など通称には変わったものがいろいろあるのでしょうね。
by knaito57 (2008-04-21 09:01) 

＠あの映画は、どこが岬だろうというような感じがしますね。まあ、最後のボートの場面が、あのあたりが岬なのだろうか、という程度でね。
　この時代の洋画の邦題は、いろいろケッサクなのがありました。というのも、配給会社が実際にはリリースだけで映画を観ないままに題名をテキトーにつけてしまうということもままあったらしいですからね。
　まあ、それでも近頃のように、まるで邦題をつめないで、なんでもかんでもカタカナのままにしていていまうというのも、どうなんかなあ。
　映画でなくても、『岬』はさまざまに使われています。演歌の題名もそうだけど、歌詞なんかまでいれると結構多いですよ。
by dendenmushi (2008-04-22 08:29)