214 鳶ヶ崎＝知多郡南知多町大字大井（愛知県）あれは3年前…（2007から数えて）

　名鉄の河和駅のあるところは知多郡美浜町で、そこから師崎行きのバスが南へ走ってきた海田鼻やこの鳶ヶ崎があるところは知多郡南知多町となる。知多半島自体がそう幅があるわけではないので、どちらの町も東西に海岸線をもっている。
　西の伊勢湾に比べると、東の知多湾のほうが風の影響を受けにくい分だけ静かである。その入江の奥に大井港という漁港があり、その北にあるのが鳶ヶ崎だが、海水浴場の砂浜が見えたと思ったら、あっという間にバスは家並みの中に突っ込んで行き、港越しにちょっとその姿をのぞかせるだけだった。


　前に知多に来たときは、西海岸の247号線沿いにある小さな宿に泊まって、伊勢湾を眺めながら温泉に入ったのだが、そのときにはもちろん空港やなんとか干潟の埋め立て問題の影すらなかった。
　南知多の町役場は、この大井とは反対側の伊勢湾側の豊浜にある。南知多町には美浜町との境界ぎりぎりの内海までは名鉄知多新線がきていて、南知多道路も豊丘まで延びているが、町内の交通はバスしかない。
　もう、ほとんどの人が忘れ去っているだろうが、日本中にあのニュースが波紋を広げ、あの騒ぎが拡大してしまったのは、ちょうど3年前のことだった。


　“南セントレア市”。
　この南知多町と美浜町が合併して、新しい市の名前をそう決めようとしたとき、日本全国から大反響がこの岬の小さな町に押し寄せ、呑みこみ洗い流したのだった。
　実はでんでんむしも、当時書いていた別のブログでそれについて感想を書いたくらいなので、ネット上にも格好の話題を提供することになってしまった。それらの書き込みの多くは、今でも検索できるようだが、合併推進協議会など大元のページは既に“Not Found”になっており、地元では遠く過ぎ去った過去のこととして葬り去られているようだ。
　もともと、こんなヘンテコな案が浮上してきたのには、いろいろな想像ができる。
　部外者がみて、その体を表す名称としては“南知多市”がもっとも自然だったのではないかと思えるが、そうすんなりと決まらなかったのは、それだと南知多町にもう一方の相方の美浜町が吸収されたようになって、具合が悪いということだったのだろう。人間がこだわることというのは、そんなものである。
　だが、考えてみるとことが新市名だけにあったのではなかったはずである。新市名への反発とともに、肝心の合併そのものも白紙撤回され、いまはひっそりと受けた傷を癒しているように見えるこの町は、さまざまな問題を抱えたままのはずである。
　地方の問題は、ここ十数年で急に出てきた問題ではないことは当然だが、“やったモン勝ちという忌むべき風潮を助長してきた小泉改革”以降は、ますますそれが顕著になり、拍車をかけてきているようにも見える。
　合併をあせって、珍奇な名称でもそれがなにがしかの効用があると錯覚した人ばかりを責められない。そこまで、追いつめられていたのかと、気の毒にも思える。
　どんな地方でも、ちゃんと人が暮らしていける、そんな国にすることはごく当たり前のことである。それがそんなに特別なことで、むずかしいことなのだろうか。

▼国土地理院　「地理院地図」
34度44分14.25秒 136度57分24.44秒

東海地方（2007/12/17　訪問）

＠このブログは、ヘッダー、サイドバーをも含めた、全画面表示でみることを大前提としています。

タグ：愛知県

コメント 2

あの騒動があった町でしたか。もはや記憶の彼方で、３年前のこととは思えません。
知多湾に浮かぶ“篠島”を思い出しています。私は小さな島に魅力を感じるタチなので、出不精のわりにはこれまで（東から）大島・仁衛門島・初島・淡路島・宮島の地を踏んだことがあります（お粗末さま）。篠島で覚えているのはただ一つ“水色のかき氷”。それはイチゴでもメロンでもレモン色でもないコバルトブルー！　半世紀近い歳月を超えて、なおあの色の記憶は鮮やかです。
by knaito57 (2008-01-29 10:16) 

＠実は、これから篠島へ行くことになりますよ、わたしも。
　来週は淡路島です。しかし、このknaito57さんの行った島リストは、全部小さい島とも言えないし、一見なんの脈絡もありませんなあ。
by dendenmushi (2008-01-31 11:56)