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187 鵜ノ子岬=北茨城市平潟町(茨城県)崖に咲く花はなにゆえに [岬めぐり]

 五浦へは二度ばかりきているので、大津港の駅に降りるのは初めてではない。だが、平潟へ降りるのは初めてだった。駅から乗ったタクシーは、まさに降りるように民宿が軒を連ねる通りを港へと下っていく。平潟の港は、南側の大津港の4分の1くらいの規模しかないようだが、トロール船などの基地になっているらしい。
 この日の雨は、少し小降りにはなったが、降り続いている。その雨の中、平潟港の北の堤防を助けるように出っ張っているのが、鵜ノ子岬で、この稜線は茨城県と福島県の県境をなしている。この向こうは勿来である。

 岬の先端から少し回り込んで、福島県側が見えないかと、高いコンクリートの堤防の間をうろうろしてみたが、草は生い茂り、ごみか何か訳のわからないものが散乱していて、雨中にとても足を踏み入れたいところではなかった。

 まっすぐに切り立った岬の崖には、かなり高いところにハマギクが白く咲いている。白く小さく群れているのが、雨の中に鮮やかだ。
 なにゆえに、こんなところにこんな花が咲くのだろう。自然というのはなんとも不思議なものだと、今更のように思うのは、このあたり一帯に自生地が多く、とても目立っているからでもあり、またこの花が菊でもないのにキクと呼ばれて、それでも平然としているおもしろさでもある。確かに、花は似ているが、葉や茎はむしろサボテンの仲間かと思うくらいなのだ。
 漁港では、ちょうど一艘の船が着いたところで、フォークリフトが行き交い数人の人が、さっそく魚を切り分けたり、忙しく立ち働いている。

 突然、集まっていたカモメなどの鳥たちの騒ぎがギャーギャーと一段と大きくなった。魚の不要な部分を岸壁に捨て、それを処理するのが彼らの役目であるらしい。港につきものの光景でもある。
 港につきものなものにも、いろいろあるが、忘れていけないのが神社。これはかなり深く港の人々に関わっているというか、非常に古くからの信仰の原型をとどめているように思える。
 鵜ノ子岬の中腹にも、港を見下ろし見守ってきた一面苔むした古い神社がある。その境内は、うっそうとした古木に包まれて、おごそかな雰囲気を保っている。

 そこから港を臨むと、向こう側にも小山があり、そこにもお寺と神社がある。
 この平潟の歴史も古いらしいが、港としては伊達藩が手入れし、後に河村瑞賢が太平洋航路を開くときには、重要な役目を果たした。当時まで、江戸と仙台の間では、ここが唯一の自然港だったという。

 雨のそぼ降る港は、なぜか寂しい。
 まあ、アンコウでも食べて帰るか…。その前に、まだ岬が残っている。

▼国土地理院 「地理院地図」
36度51分32.41秒 140度47分41.26秒
187うのこみさき-87.jpg
dendenmushi.gif関東地方(2007/10/26 訪問)

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タグ:茨城県
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きた!みた!印 6

コメント 2

knaito57

茨城と福島の県境ねえ。じつはかねがね私は「福島・栃木・茨城県の言語学的背景」に注目しています。というのは栃木に地縁があってこの辺りの特徴的な訛りにはくわしく、テレビなどで話す人の微かな土地癖でも金田一さんみたいに感知できるのです。地勢を考慮すると三県にまたがる広域に言語的共通性があることはふしぎに思われるのです。
二夜にわたって『点と線』を見ちゃいました。あらためて松本清張の独創性はすごいと思ったけれど後編は他愛なく、今日の視聴者から見るとどうしようもない時代のずれを感じました。むしろ昭和30年代的風景や飛び交う方言が楽しめました。「岬めぐり殺人事件」なんてできませんかね。
縮小地図ではこの辺は太平洋に面した“のっぺらぼう”に見えますが、けっこう凹凸があるんですね。常磐線に高萩行きという列車がありますが、こんなところに行っているんだと知った次第。
by knaito57 (2007-11-26 11:13) 

dendenmushi

@松本清張がまたブームになるというのも、考えてみればヘンなもんですね。古いものしかいいものがない、ということの裏返しで、あんまり喜べない。
 最初『点と線』をテレビでやると聞いて、あれを現代に翻案するのは無理だろうと思いましたね。だって、その亜流・モノマネが、もうずーっといっぱいドラマで流れているんだもの。それに、今の人なら「なんですぐ飛行機だと気がつかないんだろう」というくらいが普通の反応でしょう。
 それが、翻案ではなく時代もそのままにやるというので、今度はまた『三丁目』かと思いました。それもCGのお陰です。
 やっぱり、古参刑事の娘と若手刑事の今を持ち出してきて、回想させるという位しか、手がなかったということです。やっぱり…。
by dendenmushi (2007-11-27 07:51) 

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