168 ゲド鼻=男鹿市戸賀塩浜(秋田県)なまはげよりももっと怖いもの [岬めぐり]
朝一番の加茂発のバスに乗って、男鹿温泉に向かう。ホテルの送迎車が出るのは遅くなるというので、それを待ってはおられない。なにしろ、今日は秋田県も南の端に近い象潟まで行く予定なのだ。
加茂と戸賀を結ぶ道路は、昨日走ってきた加茂と門前を結ぶ険峻な道よりは、山も高くなくずっと穏やかである。だが、ここも人家がまったくないという点では同じだ。
男鹿水族館の屋根を見ながら、菅江真澄の白い標柱も立つ坂道をヘアピンカーブで下ったところが、ゲド鼻であった。どうしてこういう名がついたのかわからないが、この岬に続く宮島・さば島という岩島があるのを見ると、ここもまたもっと大きな岬として一連のものだったのかもしれない。宮島には、小さな灯台が、ちょこんとのっかっている。
周囲は広い駐車場になっているが、これは水族館のためのものである。早朝で、水族館も開いていない時間だから一台の車もない。運転手さんに聞くと、「ええ、そりゃもう休日などはいっぱいであふれますよ」という。
ヘアピンカーブの上には、テレビの旅番組に出てくる超高級値段の宿もあるし、水族館も人気ということは、ここはもうなまはげの領域ではなく人間の俗世間なのだ。バスも水族館までの便は本数も増えるらしい。
ここら辺りの海岸には、岩と護岸ばかりで、草木の一本もない。そのため、必要以上に荒寥とした感じを見る者に与えているような気がする。
このゲド鼻と二つの島が、卵形をした戸賀湾の南の入口を区切っている。
…それにしても、去年だったか見たあのアニメ映画は、ひどい駄作だったなあと、岬の名前“ゲド”つながりで関係のない連想が広がってしまう。いくらオヤジが名作アニメをたくさんつくるといって、そのムスコが同じようにできると、どうして思うのだろう。それに多数の人間がぶら下がって、億単位のカネがくっついて、こんなくだらないでたらめなアニメ映画がつくられてまかりとおってしまうという現実には、エタイのしれない恐ろしさを感じるのは、単にでんでんむしがへそ曲がりの故であろうか。もはや格差社会を超えて新たな身分社会が形成されつつあるようで、資質や能力がないのにもかかわらず、地盤と看板ですべてが流れていく。それは、なまはげよりももっと怖いことではないのか。特異な才能や技能が親から子へ継承されていくことは、当然のこととしても、それにしても…。
日本はいまや、三流タレントから総理大臣まで、なんでもかんでもすべて“世襲”と“親の七光り”だけでできているようだ。
39度56分41.64秒 139度42分14.30秒
東北地方(2007/09/06 訪問)
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