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128 爪木崎=下田市須崎(静岡県)瓜にツメあり爪にツメなし [岬めぐり]

 いくら、江戸城にあまり近くないほうがいいとはいっても、下田ではあまりにも遠く離れ過ぎているようにも思える。けれども、横浜や横須賀も寒村で、港湾もまだ整備される前であってみれば、大型の外航船が投錨できる自然の港を求めるとすれば、それは房総にも三浦にも相模にもなく、結局伊豆もここまでこざるを得なかった、ということなのだろう。
 幕末の日本が大きな転機に遭遇しようとするとき、下田は常に重要な役割を果たしてきた。そういう歴史を考えると、下岡蓮杖という日本で最初のプロカメラマンが、ここで生まれここで活躍したのは、当然なのだったろう。

 下田の港が港としての役目を果たすために、陰ながら貢献してきたのがこの半島である。とはいっても、半島というには小さ過ぎ、またこれ全体を岬というには大き過ぎる多くのでこぼこをもつ出っ張りは、須崎と称される。その付け根の辺りは柿崎という。須崎の東に細長く延びたところが爪木崎である。
 爪木崎へは、スイセンの時期にわざにやってきたつもりだったのに、どういうわけかさっぱりだったという印象がある。ここも、バスはあるにはあるが、やはり車で来る人が圧倒的に多いうえに、岬には集落はなく、土産物やボートハウスなどが数軒あるきりなので、ダイヤも便利というにはほど遠い。
 朝早いバスは漁港のある須崎行きなので、途中の分岐点で降りて、岬まで歩かないといけない。はじめは民家や別荘の間を行く道も御用邸のフェンスの脇を通って行くうちにだんだんと家が消えていく。

 ひさしぶりに訪れた岬は、白い灯台がすっきりと立っていたが、あいにく雨粒がぽつぽつと落ち始めるという空模様で、その白さが映えるところまではいかない。それでも、岬と灯台というお決まりの図柄が、ここほどなんらの夾雑物なしに収まっているのは、なかなか貴重である。意外だが、下田市では岬というものは、北と南の境界をつくる岬をのぞけば、ここが唯一の岬なのである。
 東海岸のほうが行く機会が多いのは、人の多い東京から比較的近いこともあろうが、なんといっても伊豆急が下田まで走っているからである。バスもなくては困るが、電車は偉大だ。何度か、オーバーに言えば、なにやかやで数えきれないくらいここまでは来ている。バブル時代は、われわれのようなもともとカネに縁のない人間でも、多少はささやかな恩恵ないしおこばれがあったということなのだろうか。入田浜の割烹旅館や鍋田浜のリゾートホテルに泊りに来たり、下田の港の近くをそぞろ歩いて地魚料理を味わったこともあるし、なぜか駅前のパチンコ屋で暇つぶしをしたこともある。数える程しかない、でんでんむしの貴重なパチンコ体験地(しかも、景品のお菓子までとった)なのだ。さすが、観光の町。ときどきは出玉サービスしているのだろう。
 その頃は、まだ今のようにテレビも食い物屋めぐりさえしていれば企画が成り立つといった、安直な時代には突入していなかった。下田の町も、素朴な離力を秘めていて、駅に降りる客を迎えに来た近郷近在のホテルや旅館のマイクロバスが周辺にあふれていたものだった。
 今回は、逆コースで時間帯が違うので、その辺の事情がどう変わっているのか、観察する機会がなかったが、さすが、観光の町。バス停にはボードをかかえた案内係のおねえさんがスタンバイしていて、うろうろする観光客にバスの案内をしてくれていた。案内所というのはどこにもあるが、こういうサービスもうれしい。
 そうそう。バスといえば…。入間口のバス停の時刻表のこと(122 参照)を、下田に来るときのバスの運転手さん(このときも乗客は一人だったので)にいうと、申し訳ながってくれてすぐさま電話で営業所に知らせていた。

▼国土地理院 「地理院地図」
34度39分31.76秒 138度59分11.60秒
128つめきさき-28.jpg
dendenmushi.gif東海地方(2007/06/09 訪問)

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タグ:静岡県
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コメント 4

knaito57

ずっと台風情報を見ていましたが、台風4号というのはしゃれたことをするものですね。本土接近以来、佐多岬から足摺岬、潮岬、伊良子岬、石廊崎……と、しっかり“岬めぐり”をやっていました。でんでんむしさんの目でご覧になると、この台風はいったい幾つの岬を通ったことになるんですか?
by knaito57 (2007-07-16 08:03) 

dendenmushi

@そうなんです。台風も岬めぐりなんですね。わたしもちょうど台風が上陸したときには九州の大分にいたので、ホテルのテレビで台風情報を見ながら、そう思っていました。
だって、岬めぐりで行ったところの地名が、続々と出てくる…。油津では風速60メートル近い記録まで出して、見覚えのある岸壁が映っていました。
そのあとのことは、こちらも必死で移動中で知らなかったのですが、進路を見ると、岬めぐりというよりは、少し南の海にそれたようですね。
日豊線は滑り込みで、全線不通になる寸前に乗ってやれやれ。
帰りは、北九州空港から台風の影響が消えた直後の羽田に、どうにか無事戻ってきました。
by dendenmushi (2007-07-17 08:20) 

dendenmushi

@台風のあとは、こんどは地震ですよ。これも、ついこの前、岬めぐりで行ったところでした。
地震のニュースで、米山・青海川・柏崎・刈羽・西山…といった地名が続々でてきて、他人事のようには思えませんでした。
by dendenmushi (2007-07-18 08:11) 

knaito57

ホント、ホント! 馴染みの地名が多くてとても“他人事”とは思えません。といいながら、考えてみれば私はどこにも行ったことがないんですから、いい加減な感想ですが。
by knaito57 (2007-07-18 08:25) 

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