087 瀬平崎=日南市大字富土(宮崎県)伊勢でなくとも伊勢エビはとれるが [岬めぐり]
どうやら日本の観光地というのは、昔からの神社仏閣などをポイントにしたものと、人為的に施設を造り出して客寄せするのと、自然のままの景観や温泉などの恵みをウリにするのと、イベントをメインにするのと、いくつかのパターンで成り立っているらしい。
でんでんむしの岬めぐりは、観光地めぐりではないが、その何割かは岬に観光地がくっついてくる。日南海岸という少々広がりのありすぎる観光地では、そのいくつかのパターンもそれぞれにあるようだ。あわただしく車で通り過ぎることもできるが、できるだけ岬の目立つところをゆっくり歩くつもりでやってきたので、三日目の宿は、日南線の伊比井という駅からさらに南に行った富土(よくみてね“フジ”ではなく“フト”です)という小さな漁港のそばにあるドライブインにした。
海岸に沿って走る国道220号線は、去年の台風で崩落してしまったのだ。だから、現在の220号線は富土漁港や瀬平崎を通らず、トンネルで抜ける。ドライブインという商売は、車でやってくる客を拾うわけだから、そうなると痛手だろうと思って、まだ若い部類に入る宿の主人に聞いてみると、如才なくやはりそうだという。
この宿では、伊勢エビをまるまる二匹も堪能した。これも、養殖ではなくこの海で獲れる天然ものだという。日向灘の岩場の荒磯に、タテアミを入れるらしい。ついでに、「カニは獲れる場所で名前も変わるのに、エビは日向で獲れてもやっぱり伊勢エビなんですか」と、思いっきりおばかな質問を投げてみると、「やっぱり伊勢エビはブランドでしょうから」という返事。全国どこでも伊勢エビというには、神様のご威光に便乗したいつもりがあったのかもしれない、なるほど。温泉は天然で湧かないが、ラドン温泉が別棟でできている。
話は前後したが、瀬平崎という岬は、この宿の先にある。わずかな荷物をおいて、さっそく雨の岬めぐりに出かける。
富土漁港から瀬平崎まで、岩礁が続き岩場に波が打ち寄せているが、1キロ程も行くと行き止まりになる。行き止まりの瀬平崎の手前に、サボテンハーブ園のなれの果てがあった。古い地図には確かにここに「サボテンハーブ園」とあり、バス停の表示もあった。随分昔から、「宮崎=サボテン園」という記憶もあったが、これがそうなのだ。
今でこそサボテンもハーブもめずらしくないが、そこにある閉鎖の看板を見ると、「サボテン園」としては戦前の昭和12年に開園しているのだから、でんでんむしよりも古い。それから昨年の閉鎖まで68年間もの間営業を続けて「日南観光の中核を担ってきた」とその看板が自負するとおり、人工的に造りだした観光施設としては、これは草分とってもいい。フェンスでかこまれ、人為的に移植されたサボテンも元の自然が復活するエネルギーに、徐々に押されているような様子は、これも“歴史遺産”といえるのかもしれない。
そういえば、瀬平崎の南、鵜戸神宮よりには、イースター島のモアイ像の模造品を並べた観光施設もあるようだが、こういうものの移り変わりもいろいろ考えさせられる。とくにこの宮崎では、多額の税金もつぎ込んだ近年の「シーガイア破綻」の失敗が大きい。そのまんま新知事も、観光立県を柱にして“おもてなしの宮崎”を強調しているようだが、泉下の岩切章太郎は、どんな思いで今の宮崎の観光をみているのだろうか。
▼国土地理院 「地理院地図」
31度41分11.76秒 131度28分3.42秒九州地方(2007/02/17 訪問)
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