075 明鐘岬=富津市金谷・安房郡鋸南町元名(千葉県)風に乗りカモメ漂う [岬めぐり]
明鐘岬というその名前は知らなくても、この岬を眺めたことのある人は、多いはずである。久里浜と浜金谷を結ぶ東京湾フェリーに乗ると、いやでも目に飛び込んでくる、特徴的な岬なのだから…。
このフェリーにもいったい何回乗ったことだろう。この神奈川・千葉周辺では唯一の定期航路であり、台風が接近すると一番に欠航になることでも知られている。
40分にも満たないが、こどもたちが喜ぶ船旅で、大きな船や小さな舟の間をすり抜けるようにして、浦賀水道を横断していく。
前夜通過した低気圧の影響で、久里浜の港を出る前からピッチングというより前後に揺れ始め(この鏡のような港内写真は前回時のもの)、港口の灯台のある岩礁を過ぎるとローリングを始めた。が、この程度はまだたいしたことはない。このフェリーで有名なのは、浜金谷港の接岸であろう。こんな狭い港内に入ってから船の巨体を回頭させてつけるのは、実はかなりの高等技術なのだと前に誰かにどこかで聞いたことがある。台風がきて風がもっと強くなると、その微妙な技術も発揮できなくなるのだろう。
いつも明鐘岬は、北側から見ていて、常に逆光なので、今回は南側に回り込んでこの岬を眺めてみることにした。風も強いので、鋸山ロープウエイはパスする。
これまで鋸山は漠然とデコボコしているその全体の山容からその名がついたと勝手に解釈していたが、今回南側に回ってみて、その稜線の一部分の様子が確かにノコギリの刃のように見えることにも気がついた。その刃の上に、強い向かい風に向かい浮かんでいるカモメが一羽、また二羽…。
海岸線ぎりぎりのところを127号線が走り、何か所も半分トンネルのような覆いで覆われている。昔は難所だったというのもうなずける。その様子は、安藤広重の「富士三十六景」(富士山を描くのはなにも北斎と大観の専売特許ではない)にもそのままに表現されている。
ノコギリの山の稜線が海に向かって落ちてきて、それが境界線になっている。浜金谷はまだ富津市だが、明鐘岬そのものは鋸南町になる。鋸南町では、元名の海岸のあたりから、明鐘岬と富士山を望む風景を売り出そうとしているが、この日は残念ながら富士山までは見えなかった。確かに遠くに久里浜発電所の高い三本煙突や水道をひっきりなしに行き交う大型船と富士の風景もまた、広重も北斎も大観も決して描かない現代の絶景なのかもしれない。
▼国土地理院 「地理院地図」
35度9分17.63秒 139度49分6.88秒
関東地方(2007/01/27 再訪)
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