052 佐多岬=肝属郡南大隅町佐多馬籠(鹿児島県)ここで本土はおしまいですぜ [岬めぐり]
ひょっとしたら、ここは日本で一番の“秘境”ではないか。といっても、人が行かない黒部の山奥のようなところとは、またちょっと違う意味で…。
岬めぐりをしていて痛切に感じることは、地方の公共交通がどこも麻痺寸前になりつつあるということだ。ここ鹿児島では、とくにそれが顕著らしく、その大きなウエイトを占めてきたいわさきグループが、数十に上るバス路線を整理廃止したのだという。もう、鹿児島でバスに乗るのは、自分の車を持たない老人ばかりなのだろう。
九州最南端の佐多岬に行くには、大きな大隅半島を延々と南下しなければならないが、電車の線路は日豊本線の都城か日南線の志布志までしか来ていない。バス路線に頼るしかないのだが、これが不便なことこのうえない。以前は、指宿からフェリーがあったのだが、これも廃止されているので、鹿児島から錦江湾フェリーで垂水まで行き、そこで実質的には一日一本しかないバスに乗り換えて、大迫まで行く。そこから先はこれまたいわさきの所有地とかで佐多岬ロードパークという有料道路になっていて、接続のバスを1時間以上もここで待たなければならない。鹿児島から片道80キロ近くを一日がかりで、やっと往復できた。
そんなところだから、佐多岬は観光地といっても観光バスがおしかけるわけでもないのであまり人も来ないらしく、自然がそのままで俗化していない。バスの終点から、関所になっているトンネルをくぐって、またさらに歩いていかないと、岬には行けない。わざわざこんなところに関守のおばさんをおいて、わずかばかりの通行料を取るのも、“私有地宣言”のつもりなのだろう。
灯台が見えるところまで来ると、はるかに雲を頂く種子島などの島影も見える。“本土最南端”とか、本土の東西南北のそれぞれの最端地の“四極交流盟約”などといういかめしい看板までたっている。さらに上に展望塔があるのだが、ちょうど訪問した数か月前に台風が通り、窓ガラスなどが壊れたとかで、閉鎖されていた。
自然の環境は、そのままでほおっておくのが一番かもしれない。その意味では、いわさきグループが、その所有資産を十分に活かしきっていないように見えるのは、結果的にいいことなのかもしれない。俗悪な観光施設をつくられるよりか、不便でも放置しておいてくれるほうが、岬にとってはいいことなのだろう。
大迫まで戻って、またそこから次の垂水へ戻るバスまで1時間待つ。海岸には、なんだか人工の岬のようなものが完成したところで、ちょうど完成披露かなにかの催しの準備をしていた。わーい、一番乗り〜とかいってはみたものの、果たしてこんなものをこんなところにつくる理由は、いったいなんなのだろう。
▼国土地理院 「地理院地図」
30度59分58.33秒 130度39分40.53秒九州地方(2005/09/20 訪問)
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