017 納沙布岬=根室市納沙布(北海道)北方領土を望むもはるかに遠く霞んで見えるようで見えない [岬めぐり]
天気は晴朗で波も風もなく、北海道としては穏やかな日であったにも関わらず、なにやら荒涼とした感じを拭い去ることができない。誰かが身を乗り出して押したために傾いたとでもいうような柵の前で、「あれが貝殻島か」と指さす人もあるが、海原に棒を刺したような灯台は、遠く霞んで見えるようで見えない。
だが、見えないからといってないわけではない。
北方領土の問題は、日本国民の多くが、今直接自分の前に見えないからないのかもしれない、と思って深く意識することなく過ごしてきた問題なのかもしれない。
歴史に“たら・れば”はないが、もし8月15日でなく8月1日に…。いや、もう少し早くポツダム宣言が出た時点ですぐに降伏していれば…。いやいや、もっと早く東京大空襲の前に、敗けたといって戦争をやめていれば…。
国の名前が変わっても本質的に変わらないらしいが、火事場泥棒ソ連の強引で無法な処置に、手も足も口すらも出すことができず、政治的に無為無策で戦後60年を過ごしてきた。大国の横暴も小国の跳ね上がりも、それをコントロールする力も機能も、国際的にはなんら存在しないのだ、という厳しい現実をここにきて感じた人は多いはずだろう。
美しい国も愛国心も、こういう問題に政府やリーダーがどう立ち向かってきたかということを、見えないことも見えるようにすることでしか、指し示すことのできない理想である。
鳥は国境も越えてどこへでも行く。だからといって、鳥はいいなあ、とは思わない。
▼国土地理院 「地理院地図」
43度23分6.89秒 145度49分0.29秒北海道地方(2005/04/25 訪問)
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